落語家の身分でもある「前座」は仏教に関係があるとされる。高僧が説教する前に話をし、高僧を紹介する司会役を「お前座(まえざ)さん」と呼んだのが始まりだという。客席の雰囲気を温めるため、主役の前に出る者のことも指す▼前座のはずが、存在感は主役並みだった。日本時間の8日、激戦が続いた米大統領選で「当確」となった民主党のバイデン氏が勝利宣言をする前に登場したハリス氏のこと。父がジャマイカ、母はインドから移民したアジア系の黒人で、順当にいけば、女性初の副大統領に就任する▼スピーチでは、バイデン氏のことをたたえただけでなく、民主主義の尊厳を守ったことや、有色人種の女性たちの苦難に満ちた歩みに触れ、子どもたちにも米国が可能性に満ちた国であるとメッセージを送った。団結を呼び掛けたバイデン氏の演説同様、心を揺さぶられたのは支持者だけではないだろう▼白のパンツスーツ姿も目を引いた。この服装は、女性参政権運動の象徴だとか。運動に身を投じ、道を切り開いてきた先人たちへの敬意が込められていた▼4年後にはバイデン氏が82歳となるだけに、早くも「次の次」の大統領候補の主役に躍り出たとの声も。ヒラリー・クリントン氏が阻まれた「ガラスの天井」を、打ち破るかもしれない。(2020.11.10)