寒河江市の慈恩寺は、ざっと千年の歴史を誇り、奥州藤原氏、戦国羽州の覇者最上氏とも縁が深い。重要文化財に指定されている大きなかやぶき屋根の本堂など、広い境内は見どころが多い。先月、今月と参詣した▼先月は秘仏の特別展。本堂と薬師堂、阿弥陀堂が会場だが、手を伸ばせば届く距離での拝観に、不心得者が現れたら、などと余計な心配をした。仏像は新しいものでも室町の作。古雅な趣をふわりとまとい、ほどよい照明の中、穏やかにたたずんでいた▼十二神将の躍動感、両腕が欠損した木造菩薩坐像の愛らしさ。いつまでも向き合っていたかったが、次から次と拝観者がやってくる。押し出されるように外へ出ると、ねずみ色の雨が縁をぬらしていた。時雨(しぐれ)というものだろうが、なかなか降りやまない▼楽しみにしていたことが、もう一つあった。慈恩寺は、裏山からの眺めが素晴らしいのだ。それも、この雨であきらめざるを得なくなった。忘れ物を取りに行く気持ちで、先日も出掛けた。展望台に上り、山形盆地の向こうに連なる山並みに目を向けた▼蔵王の頂が白い。半月ほどの間に、季節は大股で進んでいた。慈恩寺の仏たちはじき、何百回目かの冬を迎える。つい、限りあるわが身を思う。一日一日がいとおしいこの頃である。(2020.11.15)