マスクをして街を歩くと…。英国での体験を社会学者の堀井光俊さんが「周囲から不信と怪奇の混じった目で見られてしまう」と、著書『マスクと日本人』に書いていた。確かに、新型コロナ流行以前はそうだったろう▼日本の冬、大勢の人がマスク姿で歩いているのは異様だ-。まるで冷笑を浴びせるように、外国のメディアが報じたこともしばしば。ところが、どうだろう。コロナ禍でマスクの効果が明らかになるにつれ、外国でもマスク姿は普通になってきた▼欧米などに比べて日本で感染者が少ないのは、頻繁な手洗いなど以前からの清潔な生活習慣に加え、マスクの着用が当たり前になったのもあるだろう。ウイルスを含む飛沫(ひまつ)の拡散を防ぐ効用を否定する専門家は、見当たらない▼東京都内のタクシーでマスクをしない客を乗車拒否できるようになった。国が事業者からの申請を認可した。密室である車内では「うつさない、うつらない」ためにマスクは必要。もっとも、病気で着用できない人への配慮は要る▼堀井さんの本によると、スペイン風邪が流行した約100年前、新聞社のキャンペーンなどもあって、マスクをする習慣が急速に広がった。「異様な光景」は異様なわけではなく、感染症予防という一定の根拠がある光景だった。(2020.11.16)