1980年4月、当時としては画期的な総合スポーツ雑誌『Number』が世に出た。創刊号を飾ったのが、作家の故山際淳司さんの『江夏の21球』。広島が近鉄を下した前年のプロ野球日本シリーズ最終戦、九回裏の攻防を題材にしたノンフィクションだ▼無死満塁のピンチを迎えながらも1点差を死守した江夏豊投手の投球に焦点を当て、当事者たちの証言を基に微妙な心理の揺れや勝負のあやに迫った。スポーツジャーナリズムの在り方を大きく変え、後の作家たちにも影響を与えた▼今年はどんな結果になるのだろうか。日本シリーズがきょう開幕する。パ・リーグを制して4連覇を狙うソフトバンクと、8年ぶりの日本一奪還を目指すセ・リーグ覇者の巨人が、昨年に続いて相まみえる▼ここ3年はクライマックスシリーズを勝ち上がった2位以下のチームも進出していたが、今年は2位に大差をつけた球団同士の激突。戦力差はないだけに、短期決戦の流れをどちらが先につかむかが勝敗の鍵を握る▼日本シリーズは幾多のドラマを生んできた。7年前、東北楽天が日本一に輝いた第7戦の九回表、田中将大投手の熱投も記憶に新しい。スポーツノンフィクションの歴史に新たな一ページを刻む。そんな胸躍る名勝負をぜひ見せてほしい。(2020.11.21)