平安時代の歌人で名随筆家でもあった清少納言は、『枕草子』でウグイスにけちをつけている。鳴き声や姿、顔つきが上品でかわいらしいのに、宮中で鳴かないのは貧乏性だし、夏や秋の終わりごろまで年寄りくさい声で鳴いている、と▼「春告鳥(はるつげどり)」の別名があるウグイスは「ホーホケキョ」というさえずりのほか「チャッ、チャッ」「ジャ、ジャ」と鳴く。どうやら、その地鳴きの声が気に入らなかったようだ▼ウグイスのさえずりが聞こえ始めると、人は春の足音が大きくなりつつあることを実感する。気象庁は「生物季節観測」の一つとして初鳴きの日を観測、発表していたが、来年からやめることにした▼生物季節観測は1953年に始まり、現在は植物が34種類、動物は23種類ある。そのうち、動物は初鳴きなど全てを廃止し、桜の開花や満開といった植物の一部だけを継続する。気象台や測候所周辺の生態環境が変わり、標本木の確保や、対象動物を見つけるのが難しくなったためだという▼人はいにしえから、動物の鳴き声などを通じても季節の移り変わりを感じ取ってきた。今回の廃止は、自然環境の変化に伴い、私たちがそうした季節の移ろいを重視しなくなってきたことも影響しているのだろうか。もしそうだとしたら、味気ない。(2020.11.24)