「役に立たない取材してんじゃねえ!」。台風19号の取材で10月下旬、須賀川市を回っていたときのこと。逃げ遅れてアパート1階で亡くなった女性(79)について大家に話を聞こうとすると、ひどいけんまくで怒鳴られた。

 片付け中にテレビ局や新聞社が押し掛け、よほど頭にきていたらしい。女性を知る地区の民生委員を何度訪ねても同様で、家族からも突っぱねられた。福島県は犠牲者名を公表しておらず、「しゃべってはいけない」という重苦しい空気が地域全体に漂い、記者への嫌悪すら感じた。

 時間をかけて取材を重ねると、女性は難聴で障害者手帳を所持していたことが分かった。「明るくカラオケ好き」という周囲の話とは裏腹に、頼れる身寄りがなく、孤独でさみしさを抱えていた。

 どうして避難呼び掛けの声が届かなかったのか。女性の非業の死を伝えたことは意味があったと思っている。(報道部・吉田尚史)