京都で大学時代を過ごした。母校から近い市北部では桜の散る4月中旬、「やすらい祭」が開かれる。観光化されていない奇祭だ。

 大きな赤い傘が住宅地を練り歩き、鬼にふんした一行がかねを鳴らし踊る。平安時代から続く祭りのいわれは、風に散る桜とともに町に広がった疫病を傘に収め、鎮めるためと伝わる。古来、疫病を起こす「疫神」を引き寄せるのが鬼とされ、その役を若者が演じて疫病を集める。

 2020年春、花見の名所がにぎわった東京で、桜が散るとともに新型ウイルスが一気に拡散した。活動量の多い若年層の感染が増えたことが拡大の一因と指摘される。

 京都では他にも祇園祭など疫病退散を願う祭りが多い。この国で最も長く人間が「3密」で暮らした千年の都は、どの都市よりも疫病がまん延しやすかっただろう。

 この春を予見したかのようなやすらい祭。緊急事態の今への警鐘と感じる。(報道部・中村洋介)