戦前の仙台市中心部の様子や空襲、赴任先の宮城県志津川町(現南三陸町)でのチリ地震津波の被災経験。1903(明治36)年と09年生まれの亡き祖父母からはいろいろな話を聞いた。でも、18年から猛威を振るったスペイン風邪の話は聞かなかったと思う。

 何かの体験やそのときの思いを全て子や孫に伝えることは、大変な作業だ。長生きするほど、教え、伝え、語るべきことは山ほどある。何を選び、どう伝えるか。

 明治と昭和の三陸津波に打ちひしがれた先人たちは、教訓を何世代にもわたって伝えようと石碑を建てた。400年前の津波被災を伝える神社もあった。しかし、多くの子孫がその価値を認識したのは東日本大震災に遭遇してからだ。

 新型コロナウイルスの感染流行のただ中にいる私たちは終息後、疫病の怖さ、予防の大切さを、どれだけ次代に伝えられるだろう。震災に限らず、簡単な伝承はない。
(報道部・藤本貴裕)