多くの家族連れが訪れていた菜の花畑は、今年はひっそりと浜風に揺られていたのだろうか。

 東日本大震災からの復旧が進む南相馬市の沿岸部。子ども2人を津波で失った農業の男性は震災後、「被災地を笑顔にしたい」と浸水した自宅周辺で菜の花畑の迷路を作り開放してきた。毎年ゴールデンウイークに合わせてイベントを行ってきたが、今回は外出自粛もあり中止を決めた。

 2月初旬。準備を進めていた男性は、寒風に吹かれながら今も畑に残るがれきを拾っていた。「子どもの笑顔が見たいんだ」。優しい気持ちに触れ、自分も育てみようと種を譲ってもらった。

 寒い時季に植えたためか育ちが遅く、猫や野鳥に花壇も荒らされた。暖かくなった最近は、見違えるほど大きく成長してきた。

 震災から10年に向け、多くの取材を予定していた。でも今は自宅で開花を待ちながら、コロナ禍終息を願おう。
(写真部・川村公俊)