4月に入り、羽生結弦選手の冬季五輪連覇祝賀パレードが近づくにつれて、朝夕刊で関連記事の掲載が続いた。5日朝刊社会面「ユヅT販売へ」、8日同「羽生パレード狂騒曲」、11日同「ユヅT ネットで高値」、11日夕刊1面「ユヅT人気 金メダル級」、12日朝刊社会面「ファン待望 ユヅT着てパレードへ」、13日同「羽生パレード 観衆12万人予想」、18日同「仙台市、堤人形贈りお祝い」。パレードには、全国や海外から多くの人が訪れる。ファンはインターネットを通じても、これらの記事に注目したであろう。
 しかし、街中に並ぶパレードの道路規制を伝える立て看板の露出に比べると、少し寂しいと感じた。当日までの最新情報を、細部も含め特集してもよかった。

 9日未明、島根県西部を震源とする最大震度5強の地震があった。同日夕刊で発生が報じられ、翌10日朝刊社会面で被害拡大が伝えられたが、その後の市民生活に関する情報は掲載されなかった。
 11日の朝刊社会面「みちのく」は、秋田県美郷町が、同じ町名が縁で交流がある島根県美郷町を心配しているという話題だ。東北には、東日本大震災を経験し、他地域で大きな災害があるたびに「つらいだろう。何かできることはないか」という気持ちを持つ人たちが多い。秋田県美郷町の担当者は「何でも言ってください」と島根の美郷町に伝えたという。そんな意味でも、島根の地震被害の続報が欲しかった。
 18日夕方に発生した仙台市地下鉄南北線の6時間停止では、翌19日の朝刊社会面に「いら立ち、困惑、疲労」の見出し。帰宅ラッシュの中、大勢の利用者の不満の声を伝えた。一転、通常運転を再開した同日の夕刊には「いつもの朝 安堵(あんど)広がる」の記事。良かった、安心した、うれしいの言葉が紙面を飛び跳ねていた。写真は地下鉄仙台駅の通勤・通学などで混雑するホームのいつもの風景。当たり前のありがたさを伝えた記事で、再開の喜びを共有できた。
 話は戻り、羽生選手の祝賀パレード。前日の21日朝刊宮城版で、地図も載せて道路規制を詳しく伝えた。社会面では「仙台 熱気注意報」の見出しで、直前の盛り上がりぶりを取り上げた。そしてパレード当日(22日)の朝刊は、ラッピング特別紙面で羽生選手の雄姿を掲載。新聞を手にし「河北さん、あっぱれ!」とほくそ笑んだ。
 翌23日の朝刊では、興奮冷めやらぬうちに多岐にわたって詳細を伝えた。本紙サイト上のアクセスランキングでは一時、10位までに六つの関連記事が入った。社会面見出しの「輝くユヅスマイル」は本人のみならず、会場にいた人や、紙面を見ている読者のスマイルでもあった。紙面は、感動を共有できる場でもある。

 <あべ・きよと氏>1963年、石巻市生まれ。東北福祉大社会福祉学部卒。せんだい泉エフエム放送(fmいずみ)アナウンサー、取締役事業部長を経て2016年に独立し、MCラボを設立。地震のメカニズムなどが分かる科学実験と講演を組み合わせた「防災サイエンスショー」を各地で展開している。防災士。