「雑草軍団」の大躍進。東北に住む者にとって、地域の誇りにつながる出来事ではなかっただろうか。第100回を迎えた「夏の全国高校野球」で準優勝を飾った金足農(秋田)の快進撃である。
 紙面は勝ち進むごとに、その魅力を伝える記事が増えていった。
 8月15日朝刊スポーツ面の見出しは「勝負強さ発揮」。吉田輝星(こうせい)投手が13三振を奪い、23年ぶりに3回戦へ「導いた」と表現した。この頃から吉田投手の力投と共に、金足農ナインのすがすがしさに魅了される人たちが増えだしたのを感じた。試合後の校歌斉唱で体を反らしながら熱唱する姿を2度テレビで目にしたあたりからだ。
 17日スポーツ面は「全力校歌 響かせろ」で、この斉唱が注目を集めていることを伝えた。しかも勝った喜びと対戦相手への敬意を表すため、選手が自発的に始めたことを知り、胸が熱くなった。8強入りした18日朝刊1面には、ナインがカラー写真で登場。投手だけでなくチーム力の強さが前面に打ち出されたように受け止めた。

 戦績だけではない。19日ワイド東北面で躍進の背景には秋田県の強化策があることを知った。準決勝当日の20日朝刊社会面には、佐々木大夢(ひろむ)主将が病気で一度は野球を諦めかけたが、苦難を乗り越え復帰したエピソードを紹介。決勝当日の21日社会面では吉田投手の「人懐っこさ」という横顔を伝える記事。チームの「素顔」を掘り起こす記事は興味深い。
 そして、22日朝刊1面は、悔しそうな表情を浮かべてベンチ前に整列する選手たちの写真と共に、優勝旗の「かなわぬ白河の関越え」を伝えた。同日は、夏のこの偉業を記す大事な紙面となった。
 1面でスポーツ部のベテラン記者が「高校野球の原点 体現」の記事で、往年の東北勢公立高の活躍と重ね、その意義をつづった。社会面では、現場で汗を流してきたであろう若手が、支え合いや絆の強さという、担当記者だから知り得たナインの人間味を伝えた。
 ワイド東北面では地元出身の秋田総局長が、高校生だった34年前「4強」入りした金足農球児の雑草魂に驚き、強く心に刻まれたと述懐。県勢が初戦敗退を繰り返しながらも精進する姿から「人生は小さいことの積み重ねが大事だと感じる」と表現したことが、自分の心にストンと落ちた。署名記事は記者が関わってきた、その流れと厚みを感じ取ることができる。

 筆者はラジオのアナウンサーをしてきた。リポートする際は個人が特定される立場だった。リスナーはそのパーソナリティーに触れる楽しさもある。署名入りの22日の記事には、記者の顔写真があってもよかったのではないか。
 8年計画の最終年度を迎えるオール秋田の強化策でも優勝はかなわなかった。悲願達成に向け今後の課題にも切り込んでほしい。
 スポーツは筋書きがないドラマという。それだけにどう多角的に伝えるかは、腕の見せどころでもある。東北が一つになった夏。本紙にとっても、東北ブロック紙としての熱戦であったように思う。