新しい年、4日の朝刊1面トップは「奇跡の湿地 再生へ」の見出しで、東松島市の取り組みが紹介された。市の洲崎(すざき)湿地は地元では「洲崎沼」と呼ばれ、淡水と海水が混ざった汽水域が約5ヘクタールにわたって形成され、津波で防潮堤が決壊し一帯の環境は激変したものの、野鳥や魚、水中生物が再び見られるようになったという。

 湿地に接する宮城県松島自然の家の被災跡地を含め、水辺空間を整備し環境教育の場として活用する再生事業に乗り出したことを伝えている。同日の3面では、地元の取り組みや交流人口拡大を目指し、心の復興を促進させる役割も期待されていると報じた。

 環境変化が進む中、湿地の保全は生態系の維持にもつながる。国際的に重要な湿地の保全を目指すラムサール条約は1971年にイランの都市・ラムサールで制定され、日本国内では52カ所が登録されている。東日本大震災で大きなダメージを受けた宮城県南三陸町の志津川湾が、海藻が繁茂する藻場として、その海藻・海草を餌とする絶滅危惧種コクガンが越冬する地として、昨年10月に登録されたことは記憶に新しい。

 80年に日本で最初の登録湿地となった北海道の釧路湿原はいま、自然の保全はもとより、阿寒湖を中心に観光客の見学だけでなく、カヌー体験を含む新しいコンテンツを加えて、観光活性化・地域振興にも貢献している。

 宮城県では85年に伊豆沼・内沼(栗原、登米両市)、2005年に蕪栗沼・周辺水田(栗原、登米、大崎各市)、08年には化女沼(大崎市)が認定された。これら周辺には全国の約8割のマガンが集まり、この季節、朝焼けを背景に一斉に水面を飛び立つ姿は、近年観光客にも注目されている。

 これらの湿地は、仙台藩の時代に新田開発に伴い干拓され水田として継承され、遊水地事業や、周辺の水田も含めた水門設置事業も行われ今日に至っている。

 震災被害を受けた「奇跡の湿地 洲崎沼」に「南三陸町の志津川湾」、仙台藩の新田開発に端を発した「伊豆沼」「蕪栗沼」「化女沼」は自然環境の保全によって、水鳥と多様な植物や微生物が生息する湿地を創り出している。

 それらを再生し保全するため、その陰には地域の人々の思いや知恵、行政支援も合わせ地域の力が結集している。自然環境の保全だけにとどまらず、教育の場として、また、欧米豪などで盛んなバードウオッチングをはじめ、新しい観光資源としての活用につながることが望ましい。

 本紙は、東日本大震災発生以来『再生へ心ひとつに』を掲げる。1面トップに「奇跡の湿地」を巡る記事と、取り組む地域の人々の活動が掲載された意義は大きい。化女沼がある大崎市では19日に、ラムサール条約登録10周年記念のシンポジウムが開かれる。

 自然の保全や先人が守り育んできた湿地の価値、今後の利活用について、広い視点で取材を続け特集や連載の形で発信することを望んでやまない。