6月末から7月初頭にかけ、宮城の第1次産業に関わる二つの連載を組んだ。一つが、6月29日から朝刊1面で3回続きの「大農協元年 合併『新みやぎ』発足」であり、もう一つが27日から1面と3面で5回掲載された「商業捕鯨の針路 石巻・鮎川から」である。

 前者は、全国1位のコメ販売高となる新農協発足を通じ、現在の農協合併の背景には、スケールメリットの追求だけではなく低金利の影響で信用事業・共済事業で稼ぐスタイルが崩れていること、また組合員が減少する中、農協が暮らしを支えるインフラとしてどう機能するかという課題を担っていることを伝えている。

 後者では、かつての捕鯨基地では歓迎する声がある一方で、「十分に販路が開拓できるのか」「補助金頼みの収益構造から脱却できるのか」「反捕鯨国にどうしたら理解してもらえるのか」など課題も多く抱えていることが語られた。

 ものごとには光と影がある。新幹線が開業すれば、開業効果は得られるが人口が流出する「ストロー現象」が発生するかもしれない。新しい庁舎を建設すれば使い勝手は良くなるかもしれないが、維持費がかさむ。二つの連載は、そうした光と影の部分がバランス良く書かれていたように思う。現在の日本の農林水産業が、世界との関係を意識しなければならず、政治とも深く関わらざるを得ない状況にあることもうかがえた。

 7月4日、第25回参院選が公示された。前回の第24回参院選では、東北・甲信越の農業県で与党が苦戦した。今回の争点として、アベノミクスの評価や年金不安の払拭(ふっしょく)、憲法改正などが挙げられているが、前回の結果を考えると、東北では農産物の輸入自由化や農林水産業の振興も選挙結果を左右する重要争点となろう。

 7月8日の朝刊1面、「農業政策攻守が逆? 与党・輸出促進と技術革新 野党・農家保護へ戸別補償」によると、与党は農産物の輸出促進・スマート農業など「攻めの農業」を訴え、野党が戸別所得補償の復活などを主張しているようだ。与党は少数の大規模農家・専業農家からの集票を、野党は小規模農家・兼業農家からの集票を志向しているように見える。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)が発効して初めての国政選挙で、農業票は選挙結果にどう影響を及ぼすのか、注目である。

 本紙は、被災地のメディアとして、防災・減災そして震災復興に関する情報発信に力を入れている。「安住の灯」など震災関連の特集連載は非常に充実している。ただ、そうであるがゆえに、東北の第1次産業の未来についての特集連載が貧相に見えてしまうのは私だけではないだろう。減反が廃止され農業は競争にさらされる時代に入っており、漁業も漁業法の70年ぶりの大改正を受けて新しい時代に足を踏み出している。私としては、震災関連のものに負けないような読み応えある農林水産業に関する特集企画をぜひ立て、報道していただきたいと思う。

[かわむら・かずのり氏]1971年、静岡県焼津市生まれ。慶応大大学院博士課程単位取得。慶応大専任講師(有期)、金沢大助教授を経て、現職。専攻は政治学。近著に「被災地選挙の諸相 現職落選ドミノの衝撃から2016年参議院選挙まで」(共著)など。仙台市若林区在住。