2016年参院選から選挙権年齢が18歳に引き下げられ、主権者教育の重要性が指摘されるようになった。主権者教育は大切であるが、「主権者教育は学校で行われれば十分」という発想は誤りである。学校は基本的に知識を伝える場で、主権者としての成長は実践にある。政治に関わる会話をし、情報を集め、投票先を考える。そうした実践があって、主権者としての成長がある。家庭も地域も主権者教育の場なのである。

 新聞が提供する情報も主権者の成長を促すものと言える。若者に問いかける紙面もまた主権者教育に資する営みである。8月19日から夕刊1面に5回掲載された「#シギセン 若者のつぶやき@仙台」は、彼らの今思うことを伝える連載であった。夕刊ではあるが、こうした取り組みは仕事柄、主権者教育について考える機会が多い私にとってありがたかった。

 残念ながら、8月25日投開票の仙台市議選の投票率は、前回15年よりも若干上回ったが、36.07%という結果であった。本紙も27日朝刊みやぎ面「低投票率 お盆選挙影響か」でそれを伝えた。本紙記事では「お盆選挙」が仙台市議選の低投票率の要因と疑っているが、私は郡和子市長が議会運営を気にして、争点を積極的に設定しなかったことが大きな要因の一つと考える。

 同面の「地方政治に与野党なし」は、郡市長が市議選で政治的中立を貫いたことを報道している。換言すれば市長は市の政治的な課題を積極的に発信しなかったとも言える。首長が争点設定を控えれば、候補者たちは首長との距離感を気にせず、支持者のためにいそしめる。同時に、組織化されていない無党派層は蚊帳の外に置かれやすくなる。

 地方議員選挙においては、首長が重要争点を設定することによって、首長と各候補者との距離感が分かり対立軸が明確になる。候補者たちは幅広い支持を得ようとするようになり、組織固めをする内向きの選挙は行われにくくなる。「地方自治に与野党なし」ではかえって投票率は下がるのである。

 ところで、前出「低投票率 お盆選挙影響か」には気になる点があった。それは、選挙期日への統一(統一地方選への復帰)に関する突っ込んだ記述がない点である。仙台市議選を統一地方選へ復帰させる方法として、議会の自主解散という方法がまずある。別の方法もある。阪神・淡路大震災で選挙が延期された兵庫県議会などは、当選者の任期を短くする特例法制定を国に働き掛け、生じたズレを解消した。統一地方選の復帰を望む声があることを伝えるだけでなく、兵庫での取り組み事例等を紹介し、アクションを起こさない議会に問題提起する報道をする方がより良かったのではないか。

 今年は統一選と参院選が重なる「亥(い)年」である。宮城、福島では県議選も控えている。仙台市議選で終わりではなく、年末まで主権者としての成長を促す企画をさまざまな視点で立てていってもらえればと思う。

[かわむら・かずのり氏]1971年、静岡県焼津市生まれ。慶応大大学院博士課程単位取得。慶応大専任講師(有期)、金沢大助教授を経て、現職。専攻は政治学。近著に「被災地選挙の諸相 現職落選ドミノの衝撃から2016年参議院選挙まで」(共著)など。仙台市若林区在住。