マスコミの世界で「学者さんのような文章」といえば、正確ではあるが読者の心に響くものがない無味乾燥な文章、ということだろう。

 12月29日の朝刊1面「コメ生産目安20年微減 東北 全県で前年下回る」の記事は、正確ではあるが、焦点が見えにくかった。リードは「東北各県が設定した2020年産主食用米の生産量の目安が出そろった。国の生産調整(減反)が廃止された18年産以降、初めて全県で前年の目安を下回り、東北全体では19年産目安と比べ1万3779トン減った。国の需給見通しが減少したことを考慮する一方、各県とも県産米の引き合いが強く、減少幅を最小限にとどめた」というものだった。

 時系列経緯の説明は正しいのだろうが、ブレーキとアクセルが交互に出現し「要するに20年の東北のコメ作りはどうなるのか」が明瞭に伝わってこない。記事本文には、各県の行政・全農の担当者のインタビューが続くが、福島県担当者の分が存在しないことも不満である。福島県については、別途27日朝刊ワイド東北面で福島県の水田農業産地づくり対策等推進会議の取りまとめが掲載されているが、ここでも協議会担当者のコメントが掲載されていない。

 この報道の核は、原発事故を含む東日本大震災からの復興の途上で、福島県のコメ作りは今後どうなるのかという点であろう。東北の地元紙として、この点を掘り下げて報道してほしかった。

 全国ニュースでも東北の視点から、もう一歩食い込んでほしいものがあった。一つは、統合型リゾート(IR)に関わり衆院議員が収賄容疑で逮捕された事件である。IR事業は安倍内閣が掲げた成長戦略の目玉とされる。宮城県も本年度予算に導入の効果や影響などを探る調査費500万円を計上している。このまま誘致政策を進めていいものか、地方、被災地の視点からの問題提起が期待される。

 もう一つは、かんぽ生命の不適切販売に関する処分と社長交代のニュースである。次期日本郵政社長に前岩手県知事の増田寛也氏が就任する点に関心を持った。企業経営の経験がない増田氏が知事経験をどのように生かして、民営化された郵政事業の収益性と従業員の適切な勤務と企業倫理の確保を実現するのか、東北のメディアとして増田氏の「東北式実直経営」の可能性をうかがわせるコメントが欲しかった。

 年末年始には衝撃的な事件が立て続けに起きた。前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告の国外逃亡、年始の米国とイランの軍事衝突である。9日はイランに駐留する米軍空軍基地などへの報復攻撃と、ゴーン被告のレバノンでの記者会見がそろって朝刊1面を占めた。ともに海外での事件ではあるが、中東危機で石油の輸入が途絶した場合の秋田、むつ、久慈の国家石油備蓄基地への影響、日産いわき工場がある地元・福島県の声など、東北に結び付けた取材の切り口はまだまだあることを指摘したい。