日銀の黒田東彦総裁(73)が再任される見通しとなった。政府がきのう、同意を求める人事案を決め、与党が多数の衆参両院に提示した。
 黒田氏は2013年3月に総裁に就任し、翌4月に大規模な金融緩和を導入。景気を下支えしてきた政策運営の手腕を安倍晋三首相が高く評価し、デフレ脱却を確実にするため続投を決めたという。
 このことはアベノミクスのさらなる推進とともに、その中核である金融緩和路線を継続させることを、国内外に宣言したことにほかならない。
 ただ、当初、2年でと約束した2%の物価上昇目標はいまだ実現せず、達成時期の延期は6回を数える。「限界」が指摘され、緩和・低金利策の長期化に伴い、金融機関の収益悪化を含む「副作用」に対する懸念も強まっている。
 いずれ2期目は、緩和を終わらせ、金融政策を平時の状態に戻す「出口戦略」が問われる。どんな手だてで、どう道筋を描くか。経験のない「異次元」の緩和だけに、終息を図るのも手探りにならざるを得ない。難しいかじ取りを迫られるのは必至だ。
 現行の金融緩和は、日銀が金融機関から国債を購入し大量のお金を供給して、金利を低下させて経済を活性化させるのが狙いだった。マイナス金利の実施を含め、追加緩和策も相次いで打ち出した。
 確かに緩和策で過度な円高は是正され、企業業績や雇用情勢は大きく改善した。今の景気拡大が戦後2番目の長さになったことに寄与していることも、否定はしない。
 だが低金利環境の長期化はさまざまな副作用を生んだ。
 貸し出し利ざやが縮小し銀行の収益を悪化させている。特に、融資業務が中心の地方銀行が被る打撃は大きく、地域経済にも影響しかねない。
 国債と共に日銀が買い入れる株価連動型の上場投資信託(ETF)についても、市場の株価形成機能をゆがめているとの批判は絶えない。何よりもゼロ金利下での国債発行は政府の財政規律を緩めた。
 同時に、不測の事態・金融市場の混乱に備えようにも、追加緩和策などとして日銀が打つ手が乏しくなっている現状にも留意する必要がある。
 物価目標2%に固執し緩和を続けるのかどうか。2期目の黒田日銀はまず、5年間の政策運営と政策効果を検証する必要がある。それを踏まえて「出口」を模索すべきだ。
 市場との対話は重要だ。金融市場は今、日銀の政策変更を念頭に置き動向を注視している。なぜなら米欧の中央銀行が米では利上げを続け、欧州でも緩和縮小に着手、今度は日銀の番と身構えているからだ。状況次第で長期金利が上昇、円高が進みかねない。
 黒田氏は出口戦略に関しては「時期尚早」と言及を避けてきた。だが市場は催促する。「出口」をしっかりと描き市場に説明し、異次元緩和を軟着陸させねばならない。