普通の家やマンションの空き室に有料で客を泊める「民泊」を全国で解禁する住宅宿泊事業法の6月施行を前に、自治体が条例で規制する動きが活発化している。住環境の悪化を懸念してのことだ。
 国は「過度な制限はすべきでない」と規制例まで示し自治体をけん制するが、住民の生活に我慢を強いるような観光振興策はあり得ない。求められるのは生活と観光振興を調和させる工夫だろう。
 宿泊の営業をする場合、現行は旅館業法に基づいて許可を得るか、国家戦略特区制度を活用する必要がある。だが実際は許可を得ない「ヤミ民泊」が横行し、ルールが必要との声が上がっていた。
 新法では一定の条件が整えば自治体への届け出で、誰でも営業できるようになる。ただ、客を泊められる日数は、既存の宿泊施設に配慮して年間180日まで。都道府県や政令市、中核市などは独自に条例で営業日数の上限を引き下げたり、地域を制限したりできる。
 民泊は日本の暮らしを低料金で身近に体験できる楽しさがあり、外国人に人気だ。東京や京都、大阪といった人気の観光地ではホテルや旅館が予約しにくくなっていることもあり、民泊を選ぶ人も多いようだ。観光庁の調査では、ホテルの稼働率は年々増加傾向にあるといい、京都市では2020年に宿泊施設が1万室不足するとの試算もある。
 政府は東京五輪・パラリンピックがある20年に、訪日客を4000万人に増やす目標を掲げる。新法により一般住宅が目標達成に欠かせないインフラと位置付けられた格好だ。だが大都市では民泊の増加に伴うトラブルも起き、弊害が指摘され始めている。
 「ゴミ出しのルールを守らない」「騒音がうるさい」「マンションに見知らぬ人が頻繁に出入りする」といった相談や苦情が相次いでいる自治体もあり、規制条例が各地で検討されている。
 東京都大田区は既に、特定の地域全体を通年禁止する条例を制定。仙台市も住居専用地域の宿泊を原則、土曜日限定とする方針だ。
 これに対し国は昨年暮れ、通年禁止は「法の目的を逸脱するもので、適切でない」とし、「合理的な範囲内で例外的に制限できる」と指摘した指針を公表。自治体の動きにくぎを刺した。
 地方経済と地域の活性化へ、訪日客誘致など観光振興は重要だが、平穏な住民生活の確保をより重視する自治体の姿勢は、非難されるものではない。問われるのは住民生活と観光施策のバランス。一方にしわ寄せがいくような施策の進め方は好ましくない。
 客が住民と交流したり、苦情に対応したりする優良な事業者に対する認証制度を設ける自治体もある。一つの方法だろう。客と住民の双方にメリットをもたらすような知恵が求められる。