地方の若者がみんな東京に吸い寄せられていく。東北のそんな切実な課題の解消につながるのだろうか。
 東京23区内の大学の定員増を新年度から10年間禁止する法案である。地方から進学する若者の流入を抑え、東京一極集中の是正や地方再生に結びつける目的という。政府は今国会での成立を見込む。
 進学しそのまま東京圏(1都3県)に居着く人は依然として多い。2016年の東京圏の転入超過は約12万人。そのうちの8割は15~24歳だ。
 法整備は、そんな流れを食い止めたいという地方側の要請を踏まえて進められてきた。全国知事会が昨年、立法措置を政府に求める決議を採択。政府の有識者会議も法規制を支持した。
 しかし、特定地域の大学を対象にした一律の定員抑制は少々強引に映る。大学の自主性や、若者の進路の幅を狭めかねない懸念があるからだ。
 問題は実効性であろう。文部科学省は、定員を超えて入学させた私立大に対する補助金交付基準を16年度から厳格化している。それに伴い都内の大規模私大が超過を抑えた結果、17年度は学生が地方に回ったという。
 門戸を狭めて東京への流出を一定程度減らすことができたとしても、学生の次の選択が地元の大学とは限らない。
 地域に若者をつなぎ留め、活性化を持続的に進めていくなら地方大学の魅力を高めるしかあるまい。卒業後の働く場の拡充も不可欠だ。
 法案では、大学振興に向けた交付金創設も盛り込んでいる。自治体や企業と連携する産学官の枠組みで新産業の育成や人材づくりを支援する。ただ、この交付金だけでは地方圏にある500超の大学の底上げは難しいだろう。
 東京都の小池百合子知事は「(法制化は)東京と地方の対立をあおる」などと反発姿勢を強めている。一部の教育関係者らも地方間の綱引きになることを懸念する。
 地方創生という国の根幹に関わる課題と、大学の定員抑制を絡めて論じることに混乱の元がある。どっちつかずで中途半端な結果に終わらせることだけは避けたい。
 急速な少子化で約4割の私大が定員割れしている。その影響は地方の小規模大学ほど大きいとされる。経営体質の改善や教育の質の向上に真剣に取り組まない大学は生き残れない。それは都内の大学も同じだろう。教育の本質論を抜きにして学生の奪い合いをしている時ではないはずだ。
 小さくても地域の特色を生かし、独創性の高いカリキュラムで東京の大学に勝てる力を持つ地方の大学は少なくない。国はそんな各地の実践を支え、拡充する本格的な施策を打ち出すべきだ。
 若者の地元定着と地方大学振興に向けあらゆる知恵を結集していきたい。その積み重ねこそ地方再生につながるのではないか。