沖縄だけではない。米軍機による事故や落下物のリスクから逃れられない現実が東北にもある。そのことを改めて見せつけられた。
 米軍三沢基地(三沢市)所属のF16戦闘機が20日、離陸直後にエンジン火災を起こし、基地近くの小川原湖(青森県東北町)に外付けの燃料タンク2個を投棄した。
 落下地点付近では当時、10隻近いシジミ漁の漁船が操業していた。最も近い船は、わずか100~200メートルほどしか離れていなかったという。
 タンクは長さ約4.5メートル。直径約1メートル。燃料を入れない状態でも200キロ以上ある。一歩間違えば、大惨事につながりかねなかった。
 投棄は、機体を軽くして一刻も早く基地に引き返す必要があったためとされる。米軍側は「人けのないことを確認してタンクを投下した」「離陸前点検では問題がなかった」などと手抜かりがないことを強調するが、住民の納得が得られるとは思えない。
 事態はどれほど差し迫っていたのか。太平洋上に出る選択肢はなかったのか。そもそも湖面周辺の安全確認は本当に十分だったと言えるのか。けが人が出なかったのは幸運にすぎない。米軍は事態を深刻に受け止めるべきだ。
 今回は、離陸直後のトラブルだったことからしても、機体自体の性能や点検整備の問題などを疑わざるを得ない。事故を受け、東北町の蛯名鉱治町長はエンジントラブルの原因が究明されるまでF16の飛行を停止するよう米軍側に申し入れた。
 タンクの投棄に至る詳しい経過の説明はもちろん、原因究明と再発防止の取り組みに全力を挙げてほしい。
 2個のタンクは破損したとみられ、湖面には金属片が散らばり油が広がっている。小川原湖漁協は油が回収されるまで漁の全面見合わせを決めており、シジミのほかワカサギやシラウオ漁への影響は必至だ。漁業者への補償に対しても国は万全を期すべきだ。
 青森県によると、三沢基地所属F16の墜落や炎上、タンク落下などの重大事故は、記録がある1998年以降だけでも今回が10件目。小さなトラブルも含めると年数件の割で起きている。
 92年には、今回と同様に小川原湖に燃料タンクを投棄する事故を起こしている。その際、油の処理や破片回収など事後処理対策が鈍く、地元住民らの批判を浴びた。
 基地周辺の住民は事故の危険と隣り合わせにある。米軍は真摯(しんし)に向き合い、信頼回復に努めてほしい。
 沖縄県では今年1月以降、小学校の運動場にヘリコプターの窓を落下させたり、不時着を繰り返したりするトラブルが相次いでいる。
 緊迫化する北朝鮮情勢との関連を指摘する声がある。米軍によるトラブルは、人ごとではない。安全の確保を強く求めていきたい。