最先端のイノベーション基盤が、2023年にも東北に誕生する見通しが強まった。
 文部科学省は1月、物質中の電子の動き方を解析する「次世代型放射光施設」を官民共同で整備する方針を決め、3月22日まで産業界や自治体でつくり整備や運用に加わるパートナーを募集している。
 東北大青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)への整備を目指す産学連携組織「光科学イノベーションセンター」と東北経済連合会、宮城県、仙台市が共同で応じる方針だ。全国で唯一の候補地となる見込みで、仙台市への建設が確実視される。
 村井嘉浩宮城県知事、郡和子仙台市長は財政支援の意向を表明しているが、自治体である以上、限界がある。6月の建設地決定に向けて、資金確保のための産業界の自助努力が一段と求められよう。
 次世代型の放射光施設は2010年代に入り、米国、台湾、スウェーデンなどが導入したが、日本には整備されていない。学術研究や産業技術で世界をリードしていく上で不可欠な基盤施設だ。
 文部科学省科学技術・学術審議会の小委員会が年明けの会合で「産学にとって念願の施設」と早期の整備を求めていた。文科省が時間を置かずに整備の方向性を打ち出したことを評価したい。
 「巨大な顕微鏡」と言われる放射光施設は、リング型の巨大な加速器を光の速さで回る電子が方向を曲げた時に発する光を用い、ナノレベルで物質を解析をする。
 新しい加速器は円周が325~425メートル、直径は100~135メートル程度と想定する。放射光を取り込む実験設備は当初10本造る。整備費は約340億円と試算した。
 このうち国は加速器などに190億~200億円を拠出する。整備は量子科学技術研究開発機構(千葉市)が受け持つ。パートナーに対しては、加速器建屋など135億~150億円に加え、用地取得や造成の費用負担を求める。整備期間は5年を見込む。
 次世代型施設は物質の電子状態を解析する軟エックス線領域に強みがあり、国内に9カ所ある既存施設の100~1000倍の輝度がある。安価で高性能な触媒や高い磁力を持つエコ磁性材料、医薬品生産プロセスの合理化などにつながると期待される。
 官民共同の利点として、整備方向には産業界の利用ニーズを生かすことが盛り込まれた。企業の技術者や研究者の活用を踏まえた柔軟なサービス提供も強調している。
 企業が活用する上で課題だった利用時間や利用料、計測データ解析支援の点で新たな枠組みも構築する方針だ。
 国とパートナーが連携を強めることによって、産業界にとって使い勝手のよい施設を目指す必要がある。国内産業の発展をリードする拠点を東北に創出すべく、着実な計画実行を望みたい。