政府は、カジノ解禁を目玉とする統合型リゾート施設(IR)実施法案の今国会提出に向けて、策定作業を進めている。
 IRの整備箇所数やギャンブル依存症対策に目が向きがちだが、カジノ合法化の根本的な議論が深まっていない。このまま見切り発車されることに強い危惧を感じる。
 そもそもカジノは刑法が禁じた賭博であり、それを例外的に認める「公共性」は何なのか。推進派によると、外国人観光客の誘致や雇用創出といった経済効果だという。
 ただ、ギャンブルにはまって借金などで身を滅ぼす人が後を絶たない中で、他人の不幸を踏み台にするような地域振興策であってはならない。改めて国会の場で課題を問い直してほしい。
 IRには自治体の熱い視線が注がれている。北海道や愛知、和歌山、大阪、長崎各府県などで誘致の動きが広がってきている。民間の運営事業者から徴収する「カジノ納付金」が魅力なのだろう。
 政府は28日、整備箇所数として有力視されていた「2~3カ所」の自民党部会への提示を見送り、与党の協議に判断を委ねる方針を示した。
 誘致自治体の積極的な活動を受け、拡大を求める自民党議員の声に配慮した格好だ。カジノ解禁当初は上限数を設けるが、数年後には追加認定を検討する方針だという。
 しかし、IRの基本理念を定めた議員立法の「整備推進法」の審議では、提案者の自民党議員が「二つか三つでスタート」と答弁。同法の付帯決議でも「厳格に少数に限る」と明記していたはずだ。
 カジノは他の観光施設とは性格が異なる。林立するような事態を招けば、ギャンブル依存症増加への懸念が一段と強まる。その依存症対策もお寒いと言わざるを得ない。
 政府は日本人客の入場回数の上限について、連続する7日間で3回、連続28日間で10回とする案を与党に示している。入場履歴はICチップ付きのマイナンバーカードを使って確認するという。
 この回数規制の根拠はいったいどこにあるのか。例えば、シンガポールのカジノでは月に8回と制限しているのに、緩くしすぎではないか。
 全国一律の入場料金が2000円というのも、本当に抑止効果があるのかどうか、首をかしげたくなる。
 2017年度の政府による面接調査によると、これまでの生涯でギャンブル依存症経験が疑われる人は推計で3.6%。国勢調査のデータを当てはめると、約320万人にも上る。この状態でカジノを解禁すればどうなるのか。
 ギャンブル依存症は、治療が必要な精神疾患である。まずは立ち遅れている医療、相談体制の整備や予防教育の充実などに力を入れていくべきだ。IR法案と別に、継続審議になっている依存症対策基本法案を優先してほしい。