東日本大震災発生からの7年を「個」の視点で見る。老い、疾病、あるいは所得の減少。歳月は被災者の生活にさまざまな変容を迫った。
 宮城県震災復興計画は2018年度、10年計画の最後の3年となる「発展期」に入る。被災者一人一人に「発展」の実感はあるだろうか。
 住まいと借金の問題が、宮城県内の被災地で深刻さを増してきた。
 東北の被災3県のうち、宮城は災害公営住宅が最多の1万6072戸計画され、1月末現在、96%が完成した。災害公営住宅を「ついのすみか」と考える被災者は今、厳しい現実に直面している。
 住み慣れない集合住宅は近所付き合いを希薄化させた。入居者は高齢者世帯が約4割を占め、低所得者が多い上、流動性が低い。コミュニティー再生のハードルは高く、既に孤独死発生の危機に直面する災害公営住宅もある。
 入居から6年目に始まる低所得向け家賃軽減制度の段階的縮小を受け、仙台市など県内の被災自治体は独自に当面の制度継続を決めた。一方、収入が基準を超える世帯が4年目以降に適用される家賃割り増しは、据え置きを巡って自治体の対応が割れる。
 災害援護資金の返済もまた切実だ。住宅が全半壊した世帯に国と県などが生活再建資金を最大350万円貸し付ける制度は、9都県に計約520億円が支出された。
 このうち宮城が406億円を占め、約2万4000人が利用。返済は本年度から本格化し、既に滞納が発生している。震災直後に借りたものの、家庭環境や収入の変化で生活再建が進まず、返済困難に陥る世帯が出ているからだ。
 阪神大震災の被災地では24年目の今も貸付金の回収作業が続く。年金生活者が月1000円の少額返済を続け、計算上、完済に100年以上かかるケースもあるという。
 災害公営住宅の家賃の場合、減免すれば住宅維持に充てる原資が減り、市町村の持ち出しが増える。災害援護資金は返済期限の13年(返済猶予の6年を含む)が過ぎても滞納が続けば、市町村が国などへの返済を肩代わりする。
 阪神大震災をはじめ、過去の災害と同様の課題が今回もあぶり出されている。被災地をつぶさに見れば、制度設計が現実に追い付かず、「人間の復興」をつまずかせていると言わざるを得ない。
 家賃や返済の減免は、行政の公平性の論理から逸脱する部分もある。一方で、現代は深刻な少子高齢化と大災害頻発の時代にある。被災者対策は既存の枠組みを超え、福祉と融合させる制度構築を見据えるべきだろう。
 「最後の一人まで支援する」という復興庁のフレーズは、現状と照らせば虚実を伴う。個人の暮らしの復興は進んだか。8年目に入る今、鳥の目ではなく、虫の目で被災地を見詰める視座が必要だ。