あれだけの大災害を経験したのだから、災害対応の法律も制度も含めて次への備えは万全になっているだろう。誰もがそう思いたいところだが、現実はそうではない。
 「このままではどこかでまた同じ苦労が繰り返されてしまわないか」。東日本大震災から7年、時間が経過しても変わらない災害対応の仕組みに対して、被災地と被災者からは深い嘆息が漏れる。
 避難所と応急プレハブ仮設住宅に6年暮らし、昨年ようやく自宅を再建した50代男性は「仮設は人が何年も暮らす場ではない。被災して家を失った人たちの扱いがあのままでいいのか」と訴える。
 震災時の応急対応は、戦後すぐの昭和南海地震を受け1947年に制定された災害救助法が基になった。物資も不足した混乱期に、とりあえず避難生活の場や必要な生活用品などを「現物」として給付した考え方を基本にする。
 想定する応急期間は、当時の実態を前提にした「避難所に1週間、応急仮設に2年間」。社会事情が大きく異なる時代に起きた、広域的で被害甚大な震災の現実に対応するには到底無理があった。
 運用面で民間の貸家を活用するみなし仮設の導入や面積要件の緩和といった工夫が逐次なされたものの、プライバシーも保てない劣悪な狭い空間で我慢を強いる「短期応急」の構造自体は変わっておらず、長期避難者の現実の苦悩につながっている。
 みなし仮設にしても、現物給付の原則により契約手続きの事務作業が煩雑化し、自治体の現場は悲鳴を上げた。
 金銭給付への転換、仮設関連を災害救助法から切り離して後の復興公営住宅と連動させて整備する必要性などを自治体や専門家が盛んに要望、提唱しているが、本格的な検討は先送りされたままだ。
 59年の伊勢湾台風後に制定された災害対策基本法、95年の阪神淡路大震災を契機にできた被災者生活再建支援法など、災害法制は大災害を後追いする形で整備されてきた。
 継ぎはぎ体系の中、国と都道府県、市町村の役割分担や責任を巡る二重性、広域災害への視点の欠如などが課題になっている。南海トラフ巨大地震など国難になる大災害が予想される中、一部改正や運用では対応しきれない段階に入ったと認識すべきだ。
 改憲の突破口を視野に大災害時に国の統制力を強める緊急事態条項の創設を目指す動きが政権内で活発だが、順番が逆だろう。被災者の暮らしに直結する災害救助法の見直し、災害法制全体の再整備にこそ注力してほしい。
 事前の防災強化から復旧復興まで連続して切れ目なく対応する専任省庁を新設し、恒久的に大災害に備える態勢を構えることも急務と考える。
 「同じ犠牲と混乱を繰り返さない」。それが被災地、被災者の切なる願いであることを改めて訴えておきたい。