災害の犠牲や被害を最小限に抑え込むためには、同じ態勢のまま同じ事を繰り返すだけでは足りない。気象庁が今月1日に創設した「防災対応支援チーム」(JETT)もそうした「覚悟」を共有した一歩と言える。
 多くの犠牲を伴う深刻な災害が多発する中で、後手に回った感も否めないが、検証に基づいて対策を具体化させた姿勢をまずは評価したい。
 JETTは、被災現場となった自治体の災害対応の判断をじかに手助けするために編成された。気象庁が全国の職員の3割弱に当たる約1400人を登録し、大雨のような災害が起きると予想されるケース、地震や噴火で二次被害を防がなければならないケースなどで、都道府県や市町村の対策本部に派遣する。
 職員は時々刻々の気象データや専門知識を基に、現場の近くで状況を解説し、自治体が的確な避難情報を出せるよう助言する。仙台管区気象台は管内で68人を登録した。即時対応できる基幹職員数であり、災害規模などに応じ逐次増派の態勢を取るという。
 気象庁はこれまでも職員派遣を随時行ってきたが、位置付けは不十分だった。8人が犠牲になった2015年の関東・東北豪雨、岩手県岩泉町の高齢者施設で9人が犠牲になった16年の台風10号豪雨などでは、気象庁が出す警戒情報がうまく活用されず、自治体の避難指示や勧告が遅れたことが問題になった。
 「有用な情報を出しても現地での活用につながっていない」「変更が重ねられた警戒情報の意味が理解されていない」といった課題が浮かび、17年に学識経験者の検討会で議論した結果、JETT編成が提言された経緯がある。
 検討会の報告書は「気象台は防災機関」と明示し、「防災意識社会、地域社会を担う一員との意識」を強く持つ必要があると指摘した。気象情報を提供する「発信」の視点を超え、具体的な「地域支援」に取り組むよう求めた。
 踏み込んだ対応の成果は東北に好例がある。17年7月の秋田豪雨で、当時の秋田地方気象台長が14市町の首長に直接電話をかけて情報をやりとりしたことが迅速な避難を導き、人的被害を防いだ。
 台長は着任後すぐに管内の全市町村を回り、首長と携帯電話番号を交換するホットラインを築いていた。地域の会合や祭りにもできる限り顔を出していたという。JETTの運用も平時の「顔の見える関係」作りが鍵になる。
 秋田の台長は台風10号豪雨当時、岩泉を管轄する盛岡地方気象台の台長だった。犠牲への悔恨が行動の基にある。
 救えた命があったはず。東日本大震災後の地震津波対応も含め、防災関係者の一歩はそこから始まる。産学官民全ての現場で、既存の業務と役割にとどまらない踏み込んだ対応が迫られていることを改めて確認しておきたい。