セクハラ問題を巡り、麻生太郎財務相が常識外れの発言を繰り返している。
 14日の衆院予算委員会で福田淳一前財務事務次官のセクハラ問題を巡り、被害女性に「おわび申し上げる」と初めて謝罪した。問題発覚から1カ月以上もたっている。世論の批判に追い込まれた形であり、遅きに失している。
 麻生氏はセクハラ問題に関連し、2度にわたり「セクハラ罪という罪はない」と述べた。最初の発言後には財務省前を含む各地で発言への抗議デモが起きた。それでも「罪としては親告罪であって、訴えられているという話も聞いてませんから、事実を申し上げただけ」と開き直った。
 麻生氏はかつて、憲法改正に関連し戦前ドイツのナチス政権とワイマール憲法の関わりに触れ「あの手口を学んだらどうか」と述べるなど問題発言を重ねてきた。
 今回は失言癖では片付けられない。副総理も務める政権中枢の暴言であり、政治家としての基本的な見識を疑う。
 財務省は福田氏の行為をセクハラと認定し処分した。最高責任者はもちろん麻生氏だ。にもかかわらず、福田氏を擁護するような発言を繰り返し矛盾を広げた。
 これまでも「(福田氏は)はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろ意見は世の中いっぱいある」と配慮に欠ける発言があった。
 最終的に撤回したものの、頑迷な姿勢は問題軽視としか映らない。性被害を告発する動き「#MeToo」が世界に広がる中、国際動向への認識不足もさらけ出した。
 それでも自民党内に批判は渦巻いていない。同党の伊吹文明元衆院議長は麻生氏発言について「全く正しい。刑法やその他の法律のどこを探してもセクハラ罪という法律はない」と述べた。党内には「麻生氏はそういうキャラ」と目をつぶる声すらある。
 何より不可解なのは、安倍晋三首相が黙認していることだ。首相は2013年、米ニューヨーク国連本部での演説で「日本の内でも紛争下の地域、貧困に悩む国々でも女性が輝く社会をもたらしたい」と述べた。看板政策の女性活躍支援を国際的にも打ち出したのである。
 麻生氏の発言を放置することは、掲げた政策に逆行する。政権そのものがセクハラに寛容なことを国内外に示すことになりはしないか。
 首相は秋の自民党総裁選で3選を目指す構えで、第2派閥の麻生派が支持する。総裁選への影響を考慮し、麻生氏への対処が甘くなっているとしたら本末転倒である。
 昨春、今村雅弘前復興相が東日本大震災の被害を巡り「まだ東北であっちの方だから良かった」と発言した際、麻生氏は「ふざけた発言だ。緊張感に欠ける」と酷評した。
 自身もいま、偏狭な発言を振りかざし、緩んでいることを自覚すべきではないか。