全国的に拡大している所有者不明の土地が、公園用地などに活用できるようになる。
 都道府県知事の判断で市町村などに公益目的での利用権を認める特別措置法が今国会で成立した。
 活用策は「不明地」の発生を元から断つ根本的対策とは言えないが、適切な国土管理への第一歩となる。実効性ある運用を求めたい。
 東日本大震災の復興事業では、防潮堤や高台移転の用地取得に当たって、至る所で所有者不明の土地にぶつかり買収が停滞した。固定資産税を徴収できないケースもあり被災自治体の足を引っ張った。
 持ち主が分からない宅地や農地は、2016年時点で九州の面積を上回る約410万ヘクタール(民間団体の推計)に上る。取引や課税ができず価値を一切生み出さないばかりか、荒廃し防災や景観上の妨げになっている。途方もない国家的な損失である。
 特措法は、公共事業に必要な土地の所有者が特定できない場合、知事の判断で速やかに公有化できるようにする。
 また土地活用を目指す新制度は、公益的な事業を行う市町村や民間企業、NPOに10年間の利用が認められる。公園のほか公民館や直売場などの用途が考えられるが、期限付き利用では施設の運営コストに見合うかどうか疑問だ。
 惰眠の土地を生き返らせる試みでもあろう。国は地域の発想とニーズを積極的に取り入れ、柔軟な対応を心掛けるべきではないか。
 そもそもこの問題は、旺盛な土地需要を前提にした従来の土地制度では想定されていなかった。単に相続登記の不徹底では片付けられない。
 地価の下落が顕著な地方は費用や手間のかかる登記の回避が慢性化している。人口減少や高齢化の進行と折り重なって今日の事態に至った。
 税制や個人の財産権にも関わる深刻な問題を漫然と見過ごし、政策論の対象にしてこなかった国の責任は重い。
 今回の活用策で、国は10年で100件の利用権適用を見込むが、焼け石に水だ。不明地化を未然に防ぐための抜本的対策が不可欠ではないか。
 政府が先頃まとめた基本方針では、地籍調査の着実な実施や、相続後の登記の義務化、土地所有権の放棄制度の新設などを検討課題に挙げた。20年までに必要な法整備を進める見通しという。
 現行では登記自体は任意の判断となっている。義務化となれば費用をどう負担するかという新たな問題が生じる。
 また所有権放棄も納税を逃れようとする所有者に悪用される懸念がある。国や自治体が土地の受け皿になるとすれば、無駄な管理コストがかさむだけで終わる恐れもある。
 多くは個人の財産である土地は社会を支える基盤でもある。所有者不明の土地をこれ以上、増やしてはなるまい。限られた国土を有効に使うために国民的議論を深めたい。