発災直後の「救助」、避難所の開設や応急仮設住宅の建設も含めた被災者対応の権限を、都道府県から政令市に委譲できるようにした改正災害救助法が8日、成立した。
 阪神淡路大震災を経験した神戸市、東日本大震災を経験した仙台市などが長年要望してきた経緯があり、大都市が災害対応を自らの判断で迅速に進めるために必要な改正が実現した意義は大きい。
 都道府県側は二重行政の懸念やその他市町村と格差が生じる恐れなどを挙げ、改正に反対してきた姿勢を崩していない。村井嘉浩宮城県知事は仙台市への権限委譲の前提になる国の意向聴取(同意)の手続きにも慎重な考えを表明したが、狭量に過ぎる。
 広域災害での犠牲と混乱を回避するために、十分な組織や人員、予算を持つ政令市の力をどう引き出し、活用していくか。必要なのは権限争いの弊を越えた連携強化の視点であり、法改正を被災者本位の救助態勢を考え、整える機会にする姿勢だ。
 来年4月の改正法施行を控え、一刻も早く県と市が実務協議に踏みだし、大都市の対応力を取り込んだ新しい枠組みの公助モデルを示す。それが震災被災地が取るべき道、責務であると心得たい。
 災害救助法ができた戦後すぐ1947年は市町村の力がまだ弱く、都道府県を救助主体と定める必要があったが、状況は大きく変わった。56年に政令市制度が始まり、大都市の自立的な自治が全国で定着する中、救助主体を都道府県に固定する意味は薄れた。
 現に2004年にできた有事対応の国民保護法は、そうした現実を踏まえ、災害救助法が定める救助と同様の「救援」業務を政令市が単独の権限でできるよう定めている。
 権限委譲すると政令市だけが緊急対応が進み、その他市町村が取り残される。都道府県側はそうした主張も繰り返しているが、自らの役割を顧みない言いがかりに近い。
 物資や資材や人員を政令市が独占する事態を避ける必要があるなら、その調整役を担う場面こそ都道府県の出番だろう。改正法はその権限は県にあると明記している。
 内閣府が法改正の効果として整理している通り、大都市圏の対応を政令市に任せることで都道府県はその他市町村の救助にこれまで以上に注力できる。混乱回避に不可欠の役割分担と捉えるべきだ。
 もちろん政令市側の姿勢も問われることになる。震災の復旧局面で仙台市は早々と応援職員が不要になったと宣言し、応援不足に苦悩する県内市町から批判を浴びた。権限委譲後は市域を越えた広い視野と振る舞いが試される。
 足元にとどまらず、現場対応に当たる基礎自治体同士の水平連携を進め、広域都市圏全体の災害対応力を底上げする中核を担う。政令市の踏み込んだリーダーシップに対する住民の期待は大きい。