災害史に刻まれた二つの地震被災で、節目となる日が巡ってくる。記憶を風化させることなく、あらためて備えの大切さを確認したい。
 6月12日は1978年の宮城県沖地震から40年、6月14日は2008年の岩手・宮城内陸地震から10年となる。それぞれ28人と23人が犠牲になった。東日本大震災の3.11と同様、鎮魂の日であることに変わりはない。
 特に宮城県民にとって6.12は「みやぎ県民防災の日」であり、防災・減災の原点でもある。3.11によって教訓は上書きされたが、原点をいま一度、思い起こしたい。
 三十数年の周期で起こるとされた宮城県沖地震に備え、県は各地に襲来する津波の高さや到達時間を公開していた。東日本大震災の前、どれだけの住民が「わがこと」として捉えていただろう。
 児童・教職員の計84人が死亡・行方不明となった石巻市大川小の津波訴訟で、仙台高裁の控訴審判決はまさに宮城県沖地震への事前防災を問いただした。
 高裁判決は、想定されていた宮城県沖地震で、大川小は津波被害の危険を認識できたとして「備えに過失がなければ、児童は津波の犠牲にならずに済んだ」と指摘した。
 教育現場に限らない。われわれは日頃から、津波への備えについて確かめ合う必要がある。
 国も12年6月、津波防災地域づくり法を全面施行し、将来起こり得る「最大クラスの津波」の浸水想定を設定するよう都道府県に義務付けた。
 津波浸水想定を公表したのは5月現在、34道府県を数えるが、東北では岩手、宮城、福島の3県がまだ公表していない。内閣府で検討中の日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震による被害規模が提示されてから、作業に着手する予定という。
 浸水想定は市町村の総合的な防災・減災対策やまちづくり、ハザードマップ作成の根拠となるだけに早急な対応が求められる。
 津波以外の備えにも目を向けなくてはいけない。6.14の岩手・宮城内陸地震は、中山間地を直撃した山岳直下型の地震だった。最大震度6強を記録し、土石流や大規模な山腹崩落が発生するなど、揺れの恐怖をまざまざと見せつけた。
 宮城県では、04年の被害想定で死者620人と推計された「長町-利府線断層帯」の直下型地震への警戒も怠ってはならない。
 揺れの被害に備えるためにも、6.14の記憶や教訓の伝承は欠かせないが、この10年の風化は著しい。3.11の津波被災によって脇に押しやられた感がある。
 宮城県は二つの地震被災の節目を契機に、過去の震災を伝え残す枠組みを模索するべきではないか。教訓を積み重ねて備えることが、命を守ることにつながるはずだ。