米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP)の関連法が成立し、国内の手続きがおおむね終了した。メキシコに続く2カ国目の手続き完了で、今後、関係国に通知する段取りとなっている。
 早ければ年内にも協定は発効する見通し。これによって巨大な自由貿易圏の誕生へと踏み出すことになる。政府としては、保護主義的な政策に傾く米国のトランプ政権をけん制し、可能性は低いが米国のTPP復帰を働き掛けることになろう。
 一方、日本国内に目を向ければ、TPPに対しては以前から農業者に強い不安が渦巻いている。発効後の農産物の輸入動向によっては、農業への深刻な打撃が年を追うごとに現実化していく恐れが否定できない。
 大規模な農業法人ばかりでなく、小規模な家族経営農業も含めて、多様な担い手が支えているのが日本の農業の特色だ。これまでの国会審議を見る限り、TPP発効後のあるべき農業の姿について、十分な議論が尽くされたとは言えない。
 食の安全の確保、自然環境の保護、さらには食料安全保障のためにも、強固な生産基盤を持つ農業に育て上げる努力が必要だ。そのために農業への政府の支援が欠かせない前提条件であることは、改めて強調しておきたい。
 経済学の視点に立てば、自由貿易が各国にとって望ましいという事実は、歴史的にも実証されてきたとされる。さまざまな貿易の障壁を撤廃し自由貿易を行えば、確かに物の価格はある程度まで下がるからだ。
 このため消費者にはメリットとなる一方、国内の生産者に目を向ければ、輸出産業を除いて、重大な悪影響を受ける。ただし、自由貿易の恩恵が全体としてプラスなら、残る課題はそれをどう国内で再分配するかだ。農業支援にどう振り向けるか、消費者の納得を得ながら具体的な議論を深めるべきだ。
 コメや牛肉、豚肉、乳製品などの重要品目に関して言えば、関税の撤廃は免れたものの、やはり輸入品との競争激化による国内産地の打撃は避けられそうにない。一例を挙げると、牛肉は現在の40%近い関税が最終的には9%にまで下がる。
 国内対策として、コメは輸入量相当を備蓄米として買い入れるほか、畜産分野などに関しても各種の支援策を用意した。これで果たして十分なのか、既存の補助事業との違いは何か。そうした疑問は拭えないが、まずは着実に実行に移すべきだろう。
 TPPの発効による国内産業への影響は、これまでの各省庁の試算にはそれぞれ開きがあり、正確には見通せないのが実情だ。影響の試算が過小ではないかという指摘もある。今後の推移をきめ細かく見守りながら、柔軟な支援策を講じる必要がある。