トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領との首脳会談が16日、フィンランドのヘルシンキで行われた。
 外交上の大きな進展、目を見張るような成果は見当たらない。信頼醸成に向けた対話の継続を確認したものの、冷戦終結後、最悪とされる2国間関係の改善に向けた一歩になるかは微妙だ。
 両首脳による会談は国際会議の場を利用した開催を除けば初めて。会談開催の合意はわずか3週間前だった。
 米側はトランプ氏の欧州外遊の締めくくりに位置付けたが、綿密な準備をして臨んだとは言い難い。先月の米朝首脳会談と同様「開催ありき」で、直感頼みのトランプ流外交は危うい。
 両国間に横たわる最大の課題は、ロシア政府による2016年米大統領選への介入疑惑だ。ロシアとの共謀を疑われているトランプ氏は会談で、介入を全面否定するプーチン氏の主張を受け入れた。ロシアが介入したとみなす「根拠はない」「捜査は災難だ」とまで言って同調した。
 会談3日前には、米連邦大陪審が、ロシア軍当局者12人を起訴している。超大国の大統領選が他国の手で蹂躙(じゅうりん)された可能性がある。
 自らが潔白であるならなおさら、トランプ氏は自国の情報機関の分析を信じて強く抗議するのが筋である。なぜこの問題だけ他国の利益に加担するのか理屈が通らない。
 プーチン氏は、ロシアに歩み寄るトランプ政権の姿を巧みに印象づけた格好となった。米民主党をはじめ、与野党議員から「弱腰」との批判が噴出している。この問題の全容解明が米ロ関係改善の鍵を握っていることは明らかだ。
 会談では米側がさまざまな問題を持ち出したが、合意に行き着く案件は乏しかった。
 21年に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉に両首脳が意欲を示したのは一定の前進だろう。米ロで世界の核弾頭の9割以上を保有している状況は異常であり、核軍縮の継続は当然のことだ。
 一方で米国は新たな核政策の指針を2月に策定。低出力核弾頭などの開発を打ち出した。ロシアも3月、米国による迎撃が困難な新型の大陸間弾道ミサイルなど戦略核兵器開発に成功したと表明した。誠実に核軍縮に取り組む気があるのか。懸念は拭えない。
 世界は依然「新冷戦」の中にある。だとするなら孤立せず協調の道を探るべきだ。
 ロシアは「力による現状変更」で、ウクライナのクリミア半島を併合。主要国首脳会議(G8)から締め出されている。米国は貿易戦争を仕掛け防衛費負担増を迫り、価値を共有していた欧州の同盟国を力で揺さぶっている。
 自国第一や強権主義では何も解決しない。自由で開かれた国際秩序を重んじるべきだろう。そうでなければ両国の関係改善は一歩も進むまい。