こうした光景を当然のように思ってしまってはいないだろうか。大きな自然災害が起きるたびに目にする避難所の様子だ。
 体育館や公民館などに大勢の人がぎゅうぎゅう詰めで床にシートや毛布を敷き、雑魚寝をしている。多くは学校の体育館で、冷暖房の設備などはもちろんない。
 間仕切りなどもなく、プライバシーが守られることもない。緊急避難的にごく短い時間を過ごす場所だから、これでも仕方がないと思っている人も多いだろう。
 しかし、こうした劣悪な環境は、睡眠不足、精神的・肉体的な疲労だけではなく、死を招く危険さえある。避難所を避けて車中泊をすれば、今度はエコノミークラス症候群の問題に直面する。
 2016年の熊本地震では体調を崩して亡くなった震災関連死の半数近くが避難所生活や車中泊を経験していた。短期か長期かを問わず、劣悪な環境に置かれたために体調を崩した被災者は実際、多かった。
 「途上国の被災地より劣悪な避難所もあった。人の尊厳も守られていなかった」。7年半前の東日本大震災の直後に、東京から被災地支援に入った専門家の指摘だ。各地の避難所はその後もあまり改善されてはいない。
 防災関係者の間で先進事例としてよく知られるのはイタリアだ。地震国のイタリアには「市民援護局」という国の組織があり、災害が起きると避難所の設営や避難者の支援などを率先して行う。
 09年に起きたイタリア中部の大地震では、約6万3000人が住まいを失った。地震直後、エアコンが付いた6人用のテントが被災地の各所に張られ、風呂やトイレのコンテナも設置された。
 テント内には普通のベッドが用意され、被災者の半数近くがテントを利用した。残りの半数は被害が少なかった近隣のホテルなどに公費で宿泊できた。避難所には食堂も併設され、温かい食事が配られたという。
 災害や紛争時の避難所の設営に関して国際赤十字は、トイレは男女別で20人に一つ以上、生活空間は世帯ごとに覆いのあるもの、1人当たり3.5平方メートルの広さ、快適な温度と換気-などと基準を定めている。
 段ボールでパーティションを作り、カーテンなどで仕切るくらいがせいぜいの日本の避難所とは、何という違いだろう。東日本大震災時の「途上国の被災地より劣悪」という専門家の指摘は、国際標準を踏まえた上での注意喚起でもあったろう。
 地震国イタリア以上に日本はさまざまな災害に見舞われる。その頻度も被害の深刻さもかつての比ではないように思われる。国や自治体の災害対応は、依然として途上国レベルであるという現実に気付き、改善にぜひ結び付けたい。