不名誉な記録を払拭(ふっしょく)しようと、少し焦りすぎてはいないだろうか。安易な数合わせの議論ばかりが先行し、問題の本質に向き合う姿勢が全く見えてこない。
 都道府県で全国最悪となった山形県知事部局の障害者雇用の水増し問題で、県は2019年中に法定雇用率(2.5%)を達成するため、契約更新の上限を迎える非常勤職員を障害者に切り替えることで、不足分の大半を埋めていく方針を固めた。
 正職員としての採用は、不足している障害者雇用のわずか1割程度にとどまる見通しで、共生社会の実現に向け、旗振り役となるべき自治体の取り組みとしては、何とも物足りない。
 県知事部局の障害者雇用の水増し(不適切算入)は17年度、76人で都道府県別で全国最多。17~18年度の障害者雇用の不足数は、民間企業なら7900万円を超える納付金を徴収される規模だった。
 障害者の平均工賃(2016年度)も月額1万1430円。大阪府に次いで全国2番目の安さで、東北6県でも5位の青森より2000円近く低い。県は障害者の雇用のみならず、就労支援全般について、立ち遅れを深く自覚すべきだろう。
 県人事課によると、来年6月時点で法定雇用率を満たすため、新たに雇用する必要がある障害者は106.5人。県は来年1~4月に契約更新の上限を迎える健常者の非常勤職員約250人のうち約60人を障害者に切り替え、文書集配や資料準備などの業務を引き継いでもらう。
 さらに来年5月以降に更新上限となる非常勤職員についても同様の対応を続け、合わせて約90人の障害者を非常勤で採用する考えだという。
 一方、障害者を対象とした19年4月の正職員採用は、今年夏に実施した定期募集(2人内定)と来年1~2月に実施する臨時募集(10人前後)の計十数人で、障害者の正職員は現在の40人から五十数人に増えるにすぎない。
 県内の就労支援団体には、こうした県の方針に懸念が広がっている。単年度契約の非常勤雇用は3年が上限。障害の特性は人それぞれで、職場に求められる配慮も千差万別だ。短期間で人が入れ替われば、環境整備が追い付かなくなる恐れがある。
 雇用が打ち切られた後の生活も課題だ。収入は障害者年金だけが頼りとなり、精神障害者や知的障害者の場合は特に、働くことで得た自信や生きがいを雇用の打ち切りと同時に失い、社会との距離が広がる心配もあるという。
 今なお、県の各部署からは「障害のある人に任せられる仕事が少ない」といった声も聞こえてくる。自分たちの潜在的な差別に気付かない職員の意識を本気で改革しない限り、法定雇用率はクリアできても、「後進県」から抜け出すことはできまい。