米国も中国も、独善的な覇権主義や保護貿易一辺倒では行き詰まる。そのことが改めてはっきりしたと言える。
 激化の一途だった米中の貿易戦争で、米国が来年1月に予定していた対中追加関税の引き上げを猶予した。中国は米国産の農産品、エネルギーなどの輸入拡大で貿易黒字を削減する。中国の不公正な貿易慣行を両政府で協議し、90日以内に解決できなければ「ご破算」にするという。
 その場しのぎの危うい合意でしかない。ただ、これ以上の関係悪化をひとまず避け、妥協と対話の余地を残したことは一定の意味があろう。
 トランプ米大統領は、中間選挙を戦う中、追加関税の報復合戦の影響で業界や消費者の苦境の声が耳に届いたかもしれない。中国も輸出企業の生産減で景気の失速感が否めず、どこまで持ちこたえられるか焦りもあったはずだ。
 週明けの東京株式市場やアジア市場は、米中合意を受け軒並み高騰。世界経済の決定的な減速は当面免れた。
 しかし、困難な問題を先送りしたことに変わりはない。米側の対中要求は既に通商交渉の枠を超えている。国主導のハイテク産業振興や、膨大な補助金を使った国有企業支援などを照準に、将来にわたる国家戦略の是正を求める形で進んでいる。
 今回の「一時停戦」で協議するのは、中国による海外企業への技術移転強制、知的財産権侵害問題、サイバー攻撃など。容易にはまとまらないとの見方が強い。たとえ合意したとしてもテーマを変え、交渉は2弾、3弾と際限なく続くのではないか。
 そうした対中強硬論の象徴になっているのは10月にワシントンで行われた副大統領による「ペンス演説」である。中国の政治、軍事・海洋進出、経済圏構想、人権などあらゆる分野に批判の矛先を向け排撃を掲げる。事実上の「新冷戦」宣言とも取れる。
 それを踏まえ米国の対中強硬派は与野党ともに多い。急速な中国の拡大路線に対する脅威と、覇権主義へのこだわりそのものに他ならない。
 大国が独善や孤立に陥っては世界の秩序は壊れかねない。ブエノスアイレスでの20カ国・地域(G20)首脳会議が対立のしこりを解く好機だったにもかかわらず、多国間協調の役割を果たせたとは言えない。米中の確執で首脳宣言に「保護主義と闘う」の文言を盛り込めなかったのは面目を重んじた形骸化の表れだ。
 安倍晋三首相は、米中の両首脳と会談し自制を促したが、全体の議論をリードするまでには至らなかった。議長国を務める来年はかつてない重責を担うことになろう。
 大国間に大きな亀裂が入った世界のリスクは重大だ。危機を乗り越えるには、各国が安定と成長に責任を持って参画することだ。自国優先の立場から圧力をかけるだけの政治では何も変わらない。