新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の策定作業が、閣議決定に向けて大詰めを迎えている。
 有識者による「安全保障と防衛力に関する懇談会」は宇宙やインターネットのサイバー空間といった新領域への対応能力向上、人工知能(AI)やレーザーなど最先端技術に重点的に資金を投入する必要性を打ち出した。2013年以来の改定に踏み切る。
 重い課題となるのは、予算膨張への歯止め策だ。防衛省は19年度予算の概算要求で、本年度当初予算の2.1%増となる過去最大の約5兆3千億円を計上した。第2次安倍政権発足以降、7年連続で増える見通しとなった。
 政府は理由に、核やミサイルの開発を進めてきた北朝鮮、軍備増強を続ける中国への対応を挙げてきた。新大綱の概要案は「従来とは異なる速さで防衛力を強化する必要がある」と強調した。
 日本の安全保障環境の不確実性が増しているとの認識に異論はない。ただ、血税に支えられた予算を湯水のように使う口実にすることは許されない。費用対効果を熟慮し、どう抑制を図るか。安倍政権の責任と見識が問われる。
 概要案は諸外国との共同開発を通じて生産コストを抑制すると記した。米国の提示額を日本側が受け入れる対外有償軍事援助(FMS)の改善も検討すると盛り込んだ。
 その米国からの購入で大きな額を占めるのは、地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」だ。陸上自衛隊の新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市、阿武町)が配備候補地になっている。
 概算要求には2基の取得関連費で計2352億円を計上した。防衛省が7月に示した本体見積額は当初の1基約800億円から約1340億円に高騰。土地造成や建物建設を含めると最終的に4千億円以上になることも示された。
 背景にはトランプ米政権による高額防衛装備の購入圧力がある。安倍政権は日米同盟を重視し、できるだけ要求に応える姿勢を示す。来年始まる日米の新たな貿易交渉を前に、必要な装備を購入する代わりに他分野の要求を軟化させようという思惑も透ける。
 もっともイージス・アショアを巡っては、山口県阿武町長が配備反対を表明し、秋田市の演習場周辺地域でも計画に反対する声が広がる。
 巨額の予算に見合う必要な装備なのか。北朝鮮の脅威を大義名分に「配備ありき」が先行し、肝心の検討がおろそかになった側面は否めない。地元の反発はそうした疑問を色濃く映し出している。
 財務省は防衛装備品調達の効率化を進め、今後5年間で現時点の見積額より計1兆円超の節約を求める改革案を示した。適切な防衛力は必要だとしても、実効性の議論を抜きにした「聖域」扱いは国民の理解を得られまい。