消費税増税に合わせて来年10月に始まる幼児教育・保育の無償化を巡り、国と実務を担う市町村の交渉が迷走した末、やっと決着を見た。地方側は、無償化で新たに必要となる費用は全て国が負担すべきだと主張してきたが、国の強い要請に自らの負担をのんだ格好となった。
 一方で、地方側が無償化に難色を示していた認可外保育施設などについては、対象とする範囲を市町村の条例で定められるよう仕組みを検討する。国が地方側に譲歩した形だが、これでは住む場所によって利用者の費用負担に格差が生じる恐れがある。
 国が財政負担や仕組みを十分に検討をしないまま、無償化を推し進めたひずみがあらわになったと言っていい。関係者や保護者の中には、待機児童問題が解消されないままでの無償化に異議を唱える人も少なくない。保育を必要とする人がサービスを受けられるよう、まずは受け皿の整備を急ぐべきではないか。
 幼保無償化は、昨秋の衆院選を前に安倍晋三首相が突然打ち出した目玉政策だ。財政の健全化などに充てるはずだった消費税増税分を無償化へ振り分けることになった。
 無償化は、3~5歳児が原則として全世帯、0~2歳児は住民税非課税世帯に認可保育所や認定こども園の利用を無料とする。認可外保育施設や幼稚園については、上限を設けて補助する仕組みだ。
 政府は必要な費用を年8000億円と試算。消費税率が10%に引き上げられれば地方税収も増えるとして、市町村には4000億円を負担させるとした。
 だが、こうした負担割合を政府が地方に示したのは11月に入ってからだ。地方側が「負担割合の説明は一切なかった」「国が全額負担するべきだ」と反発し、混乱が広がったのは当然だろう。
 政府は再度、市町村負担を当初案より1000億円少ない3000億円とする案を提示し、地方側と合意にこぎ着けたが、「保育の質」の問題は依然として残る。
 国は無償化の対象に、保育士の数や施設面積で基準を満たさない無認可施設も含めていた。認可保育所を希望しながら入れず、やむを得ず子どもを預けている世帯に配慮しての施策だった。
 これに対し市町村は「基準を満たさない施設に公費投入はできない」と反対してきた。国と市町村は、条例で対象の範囲を定めることができるよう協議の場を設けて検討するという。
 保育の質とは無関係に無償化の対象とする国の方針には首をかしげざるを得ないが、認可外が無償化の対象から外れると待機児童のいる世帯ばかりが二重、三重の不利益を被ることになる。
 「無償化ありき」で事を急いだ混迷だろう。国は制度設計を根本的に練り直すべきではないか。