歳出の膨張は止まらず当初予算として初めて100兆円の大台を突破した。消費税増税に備えた景気対策は家計の負担額をほぼ埋め合わせる規模となり、財政再建は置き去りとなった。
 きのう閣議決定された2019年度政府予算案の一般会計総額は、101兆4564億円となった。7年連続で過去最高を更新した。
 来年10月の消費税増税に伴う景気対策費は2兆280億円にも膨らんだ。社会保障費は最大の約34兆587億円に拡大。税収増を見込み借金は抑えるものの、財政規律の緩みは一段と鮮明になった。
 消費増税対策はキャッシュレス決済のポイント還元費2798億円などが柱。中小店でのポイント還元は利用可能な一部業者に消費が集中する可能性があり、混乱を懸念する声は絶えない。
 日銀の試算では増税を受けた20年度の家計負担増加額は2兆2千億円。14年の増税時は8兆円規模だったのと比べ影響は少ない。食品と新聞に軽減税率が導入されるほか、増税分の使い道を変更して幼児教育無償化に回すためだ。
 安倍晋三首相は「消費をしっかり下支えする」と強調するが、来年春の統一地方選、夏の参院選を見据えた明らかな「ばらまき」だ。財政再建のための増税にもかかわらず、景気対策を口実にした大盤振る舞いは本末転倒である。
 一般歳出の3割超を占める社会保障費では、高齢化に伴う医療や年金などの自然増6千億円をどう圧縮するかが焦点だった。薬価の引き下げなどで約1200億円を圧縮したものの、財政硬直化の要因であることに変わりはない。
 不人気になりがちな抑制論に距離を置き、国民負担の水準を巡る議論もなかった。2025年度には団塊の世代が後期高齢者となる。どう圧縮するのか綱渡りは続く。
 防衛費の拡大も際立った。過去最高の約5兆2574億円で安倍政権になって7年連続の増加。大きな要因は中国や北朝鮮への抑止力向上の名目で米国製装備品の購入額が膨れ上がっていることだ。
 秋田市などが候補地に挙がる地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」2基の取得費用の一部として1757億円を計上した。新たな防衛計画の大綱は今後5年間の防衛費を過去最大の27兆4700億円程度と示した。首相の言動からは膨張に歯止めをかける理念はみじんも感じられない。
 来年度は東日本大震災から9年目。震災復興特別会計の歳出総額は2兆1348億円とした。復興・創生期間が20年度で終わることを踏まえ、支援の深化を探るべきだ。
 「聖域なき歳出改革」は安倍政権の予算編成の支柱だったはずだ。ところが、今回は増税や安全保障に名を借りた「聖域」だけが増え、未来に振り向ける投資は少ない。巨額な閉塞(へいそく)予算と言えまいか。