クジラ資源の管理を話し合う国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を政府が正式に表明した。IWCへの通知を経て来年6月30日に脱退し、日本は7月以降、商業捕鯨を約30年ぶりに再開する。
 脱退によって南極海で行ってきた調査捕鯨ができなくなる代わりに、日本の近海や排他的経済水域(EEZ)などで商業捕鯨を実施する。南極海での商業捕鯨は行わない方針だという。
 IWCは捕鯨支持国と反捕鯨国との激しい対立で深刻な機能不全に陥り、重要事項は何も決められない状態が続いていた。科学的な議論をしようにも、反捕鯨国の感情的な対応ばかりが目に付いた。
 脱退はやむを得ない選択ではないか。とはいえ、国際機関からの離脱に対し拒絶反応を示す見方も少なくない。脱退という政府の意思決定の過程が不透明で分かりにくかったのも一因だろう。
 今後の商業捕鯨の在り方を含め、南極海からの撤退の影響、反捕鯨国の批判、過激な行動も辞さない環境保護団体への対応など、政府の丁寧な説明を求めたい。商業捕鯨の再開に対し、かつて捕鯨で栄えて再開を望む地域では、期待ばかりでなく、不安も広がっているからだ。
 商業捕鯨を巡っては1982年にIWCが一時停止(モラトリアム)を採択。日本は88年に商業捕鯨から撤退し、再開に向けた調査捕鯨を南極海や北西太平洋で実施してきた。そうした調査によって、十分な資源量があり、一部の種類は増えすぎた弊害さえ判明している。
 クジラは食物連鎖の頂点に位置し、サンマやイワシなどの魚類を大量に捕食する。もともと資源量が豊富だったミンククジラやマッコウクジラなどは、大幅に個体数が増加し、世界のクジラ類が1年間に食べる魚介類は漁業による漁獲量の3~6倍に上っているという試算がある。
 こうした科学的な根拠に基づく主張に対し、IWCの総会では、反捕鯨国の感情的な反発が強く議論にならなかった。しかも重要案件の決定は出席国の「4分の3以上」という規定があり、捕鯨支持国41カ国、反捕鯨国48カ国と拮抗(きっこう)し、何も決められない状況となっていた。
 9月の総会で議決要件を過半数に下げる提案を否決された段階で脱退は既定路線となったようだ。今後はIWCにオブザーバーで残りながら商業捕鯨をしているノルウェーやアイスランドなどの北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)と連携する方向に向かうのではないか。
 商業捕鯨の停止によって鯨肉の需要は急速に減り、そうした中で、果たして捕鯨が経済的に成り立つのかという不安が漁業者に付きまとう。捕鯨の技術や食文化の伝承など捕鯨についてのさまざまな問題の解決策を包括的に議論していく必要がある。