日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者の逮捕、官民ファンド「産業革新投資機構」経営陣の高額報酬に関わる混乱と、役員報酬を巡る問題が相次いでいる。どちらも役員報酬を誰が、どうやって決めるのか、透明性や客観性を欠いた点が問題の背景にありそうだ。
 まずは報酬の根拠を、投資家ら利害関係者を含め外部にも明確に説明できるようにする改革が必要だろう。
 グローバル競争の時代である。海外からプロの経営者を招くケースが今後、さらに増えることも予想される。欧米の役員報酬水準は日本より概して高いとされ、海外の人材に高額の報酬を支払うなら「働きと対価」を客観的に測ることができる仕組み作りも求められよう。
 日産では全役員の報酬の総額が株主総会で決議された後、各役員の報酬は取締役会議長が代表取締役と協議して決めることになっていた。だが実際には絶大な権力を持っていたゴーン容疑者が事実上1人で決めていたとされ、不正の温床になったとみられている。
 自分の報酬を自分で決める「お手盛り」の状態にあったわけだ。日本を代表する企業の一つで、こんな時代遅れともいえる経営がまかり通っていたことに驚かされる。
 こうした恣意(しい)的なやり方をチェックする仕組みは既に日本にもあるが、日産では採用されていなかった。
 会社法で定められた「指名委員会等設置会社」である。指名、監査、報酬の各委員会が取締役候補や役員報酬を決める制度で、各委員会の過半数は社外取締役が占めることになっている。日産も今回の問題を受け、委員会の設置を検討しているようだ。
 ただ組織を設ければいいというものではない。例えば報酬委員会が何回開催され、どんな算定根拠を基に、どんな議論が交わされたのか。情報の積極的な開示があってこそ、経営の透明度を高めることにつながろう。
 透明度の向上は経営の質の向上に役立つ。市場が検証できることで経営陣に緊張をもたらすからだ。
 日本では平の社員から取締役になるケースが多いこともあって、固定的な報酬が多いようだ。業績や役割に連動する変動報酬の割合を高めれば客観的な額決定の材料となり、経営陣の意欲を高めることにもつながるだろう。
 役員報酬の問題は、企業統治を巡るさまざまな論点の中でも「聖域」として最も改革が遅れていた分野だとの指摘がある。今回の問題も、日本の組織における改革の先送り体質が引き起こしたともいえよう。
 役員報酬を経費ではなく投資と考えればいい。中長期的な会社の目標に対する役員の役割や業績改善への貢献度を評価し、客観的に測る仕組み作りを急ぐべきだろう。