世界の不確実性はかつてないほど高まっている。日本を取り巻く北東アジアでは北朝鮮の非核化・日本人拉致問題、ロシアとの北方領土交渉という懸案が横たわる。
 いずれも解決に向け日本政府は独自の外交力が求められる。安倍晋三首相にとっても正念場の年と言えよう。
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は元日、ことしの施政方針に当たる「新年の辞」で「核兵器をつくらず、使用もしない」と非核化の意思を改めて表明した。膠着(こうちゃく)した米朝交渉を揺り動かした形だ。
 ただ、既存の核には触れず一方的な廃棄に応じない点も強調。独自の非核化対策の見返りに制裁解除を求める生ぬるい姿勢に変わりはない。
 新年の辞は、トランプ米大統領を2度目の首脳会談に誘い込むことはできても、具体的な非核化措置の言及がない以上、行き詰まりを解消する決定打とは言えまい。
 再会談で失敗は許されない。米国は時機を計っているのだろうが、その間に金氏が方針に反して核開発を進める可能性が高い。事実上の核保有や、急速に進む南北一体化を国際社会が是認せざるを得なくなる恐れは拭えない。
 核・拉致問題を包括的に解決したい日本は立ち尽くすだけでいいのか。日朝会談開催が見通せず米国の仲介も期待できないなら、独自のプロセスで事態を打開する構想と戦略を持つべきだ。
 安倍首相は昨年の国連総会で「積年の戦後構造を取り除く」と述べた。周辺国との戦後の懸案が消えた時、北極海からインド洋までの「海の回廊」が見えるという。
 首相の視線は、日ロ首脳会談を前に北方領土一点に向く。ロシアと昨秋、色丹島、歯舞群島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結を目指すことで合意したが、展望は開けていない。
 ロシアによる北方領土と千島列島一帯の軍備増強構想が昨年末、明らかになった。2020年までに全ての海峡を地対艦ミサイルの射程に納める。択捉、国後両島では既にミサイルが運用されている。さらに千島全域の防衛線強化に踏み切れば両島のほか、色丹・歯舞の返還交渉にも影を落とすのは必至だろう。
 プーチン大統領はこれまで極東の軍備強化について「米国のミサイル防衛に対抗するため」と主張。今回の交渉でも4島の一部を引き渡した場合の米軍の駐留を懸念し、日米安保をけん制している。
 ロシア側が対米絡みの懐疑心を抱えたまま、両首脳は領土問題に確かな道筋を付けることができるのか。交渉の行方を案じざるを得ない。
 プーチン氏も平和条約締結を望んでいる。安倍氏はロシア側の危惧を踏まえ、北方四島の「非軍事化」を米ロ双方に示す腹案を考えていた。受け入れ可能な解決策はどこかにあろう。日ロは未来志向の外交に踏み出してほしい。