就任3年目に入ったトランプ米大統領がきのう、連邦議会で予定より1週間遅れの一般教書演説を行った。
 前代未聞とも言える延期は政府機関の一部閉鎖が年をまたぎ35日間に及んだためだ。その原因をつくったのは、メキシコ国境の壁建設に執着したトランプ氏自身である。
 建設費予算を断固認めない野党民主党との対立は決定的だった。任期折り返し以降の政権の厳しい立ち位置を象徴していると言えよう。
 トランプ氏は演説で「政党ではなく一つの国として統治したい」と膠着(こうちゃく)からの打開を真っ先に訴えた。一方で「2年間の急速な成長で経済は世界の羨望(せんぼう)の的だ」などと内外の実績を強調。2020年大統領選を見据え、大仰な表現での自画自賛が目立った。
 就任後の2年間、ぶれずに国民との約束を守ろうとする姿勢は多とするにしても、そもそも政策自体が情動的で、理念と深慮を欠く。
 大型減税や規制緩和、雇用増、インフラ整備などの実績を次々に誇示したが、恩恵が国民の隅々に行き渡っているとは言い切れない。昨秋の中間選挙で民主党が全議席改選の下院を制した結果が、それを示していよう。
 トランプ氏が何としても達成したい公約はやはり国境の壁建設のようだ。「不法移民問題は差し迫った危機だ」とし、時間を割いて必要性を説明。「国民の命と雇用を守る移民制度を設けるべきだ。壁は建設する」と言い切った。
 不法移民の約半数は海路や空路で入って来る。トランプ氏は「合法的に入る人は米社会を強固にする」とも述べたが、合法的に入国した後、超過滞在する違反者の方が深刻との指摘もある。壁は熱心な一部支持者に向けての政治的アピールとしか映らない。
 現在は民主党にひとまず譲歩し、政府閉鎖を解いているが、今後の再交渉は一層厳しいものとなろう。国家非常事態宣言を掲げ、強引に突破することがあってはならない。
 外交については、今月27、28日に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長とベトナムで再会談すると表明。「多くの仕事が残っているものの、金氏と関係はいい」と述べた。
 事前交渉で完全な非核化合意が詰め切れるかは疑問だ。相手ペースに乗り、安易な合意で見返りを与えれば、それこそ再選が危うくなろう。
 演説全体を通じ「米国第一」の下、団結を呼び掛けるメッセージは不変だ。それが野党や国民にどれだけ届いているのか。この2年間、意見の異なる多くの側近や高官を更迭して政権内ですら結束できないでいる。
 「女性の活躍推進」や「長い戦争で若い兵士の血を流したくない」という主張には党派を超え拍手が沸いた。米国のリーダーの言葉は重い。言葉だけでなく多くの声に耳を傾け、残りの2年間、実直に政策に取り組むべきだろう。