岐阜県に端を発した豚の伝染病「豚コレラ」が長野や滋賀、愛知、大阪の5府県に拡大した。感染経路は明らかになっていないが、これ以上の拡大は何としても阻止しなければならない。農林水産省をはじめ関係機関は阻止に全力で取り組んでもらいたい。
 豚コレラは人のコレラとは全く別の病気で人間には感染しない。無用の混乱を招かないように、まずはこの事実の周知を徹底すべきだ。豚肉の供給や価格への影響は現段階では限定的で、消費者が不安を抱く必要はない。
 ウイルスが原因の豚コレラは、豚やイノシシがかかる伝染病。感染力が非常に強く致死率も高いのが特徴だ。感染すると、高熱を発して食欲が落ち、起立できなくなり、発病後1週間ほどで多くが死亡するという。
 国内ではかつて生ワクチンの予防接種が全国で行われていたが、1992年以降は発生がなかったことから、2007年に国際獣疫事務局によって「豚コレラ清浄国」と認められた。ワクチン接種は現在では行われていない。
 一方、感染した豚の有効な治療法や薬はまだ見つかっていない。このため家畜伝染病予防法などに基づく殺処分による防疫措置しか対応策がないのが実情だ。今回の感染地域では、豚舎の衛生管理の徹底や消毒、殺処分が進められている。
 東北の養豚農家にとっても豚コレラの発生と拡大は人ごとではない。農水省はワクチン接種には消極的だが、これ以上感染が広がる事態が懸念されるのであれば、一刻も早いワクチンの調達を検討すべきではないか。
 いったん感染すれば、養豚農家にとっては、経営に大きな打撃を与える。豚舎や飼料タンク周辺の衛生管理を厳重にし、ウイルスを媒介する恐れがあるという野生動物の侵入を防ぐなど、急いで予防策を講じてほしい。
 豚コレラ清浄国の日本での発生は、中国など外国から持ち込まれたウイルスが原因の可能性が高い。加熱が不十分な豚肉加工品を観光客らが持ち込み、食べ残しなどから野生のイノシシに感染し、広まったとみられる。
 農水省の6日の発表によると、関西空港で中国からの旅行客の豚肉ソーセージを回収し検査したところ、アフリカ豚コレラの陽性反応が出た。このウイルスは国内で拡大した豚コレラより致死率が高いという。
 5府県に広がった豚コレラの感染経路はまだ分かっていないが、感染した子豚が繁殖農家から肥育農家に出荷されるなど、感染防止に十分な対策が取られていなかった可能性も指摘されている。
 農水省をはじめ、感染例を確認した府県は、感染経路の解明を急いでもらいたい。同時に、これ以上の蔓延(まんえん)を防ぐため危機感を持って対策に当たってほしい。