「復興をさらに加速させたい」。東日本大震災の発生から8年となったきのう、津波被災地で行われた式典で、自治体の首長からはそうした声が聞かれた。
 「3.11」からの歩みは、着実に津波の傷を回復させてきた。数字を見れば、インフラの復興は確かに進んだ。復興庁によると、災害公営住宅の完成率98%、高台移転などの復興まちづくりの完了率94%、水産加工施設の再開率96%などとなっている。沿岸部には防潮堤が延びた。
 しかし、被災者一人一人の復興はなかなか見えにくい。コミュニティーは分断され、閉ざされた災害公営住宅では孤独死が絶えない。ついのすみかをいまだ確保できずにいる人、暮らしの再建に苦しむ人は少なくない。
 時の経過とともに高齢化して問題がより深刻化している人、災害援護資金の返済が始まるなどして新たな経済的困難に直面する人もいる。
 河北新報社などが実施した調査によると、岩手と宮城、福島3県の沿岸部では、震災前と比べて暮らしが「厳しくなった」とする被災者は30.4%で、割合は昨年を上回った。住宅再建などの生活支援については38.5%が「不足」と感じている。
 この8年の道のりを振り返ると、復興事業は被災者の生活やなりわいの実態に即して展開されてきたのか、疑問視せざるを得ない面もある。
 そもそも震災から1カ月後に設置された有識者らによる「復興構想会議」が打ち出した復興構想7原則に、被災者という言葉はない。
 7原則の一つは「日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない」とうたう。被災者ではなく、国に主眼を置いたこうした発想が、全国各地で復興予算の流用などにつながったのではないか。
 政府や宮城県の村井嘉浩知事が強調する「創造的復興」は、水産特区などの規制緩和や大規模な開発を促した傾向が強く、被災者の救済や支援に浸透したとは言い難い。創造的復興とは何だったのか、検証が必要だろう。
 被災地の人々の生活となりわいを再建し、一人一人が人間らしく生きる基盤を取り戻す「人間の復興」こそ復興の視座にしなくてはならない。だが、被災者の復興を支える制度はまだまだ脆弱(ぜいじゃく)だ。
 被災者が抱える複合的な課題の解決に向けては、それぞれの事情を酌み取り、自治体や専門家が連携して支援する「災害ケースマネジメント」の導入を望みたい。宮城県内で被災者の「カルテ」を独自に作成した仙台弁護士会などが法制化を訴えている。
 東日本大震災に限らず、近年は地震や豪雨などの災害が相次ぐ。被災者を主眼とした災害復興の在り方を示す基本法も今後は求められよう。復興の道しるべとなる災害復興基本法とも呼ぶべき法制度を政府は検討してほしい。