貿易摩擦を背景に米中両国の成長に陰りが見える。決着を目指した協議はさまざまな思惑も絡んで難航。首脳会談の日程すら定まらない。
 幾つかの重要な経済指標が相次ぎ発表された。米国の2018年貿易赤字は10.4%増え、過去最大の約8787億ドルに膨らんだ。約半分を対中赤字が占める。追加関税策を仕掛けて赤字減らしを目指したが、むしろ拡大した。
 旺盛な国内需要を示すとはいえ、中国から割高の輸入品を買っているということだ。関税収入は増えても国全体の蓄えは目減りする。影響は長引くことになろう。それでも実質経済成長率見通しは19年が3.2%と甘い見立てだ。
 中国は成長率目標を2年ぶりに引き下げ6.0~6.5%とした。追加関税で経済は失速している。目いっぱいの期待値と解釈すべきだろう。
 世界的にも輸出は振るわず経済協力開発機構(OECD)は19年の世界成長率を3.3%と下方修正し全先進国の減速を指摘した。案の定、内閣府は、1月の景気動向指数の低下から「景気は後退局面の可能性」と発表し経済界を慌てさせた。米中摩擦の圧迫が確実に日本にも表れてきた。
 全体を通じ言えることは、成長の鈍化と先行きの不透明感だ。中国経済の変調の要因は貿易摩擦だけでない。企業の抱える過剰債務が大きな足かせになっている。市場原理を軽視し、国の関与を強めた中国指導部の失策と言える。
 にもかかわらず、指導部は改革に後ろ向きに見える。19年は大規模減税やインフラ投資などの景気底上げ策を打つという。その上で、国防費を前年比で7.5%増やす軍拡路線を鮮明にした。安全保障面でも米国と争う意図をうかがわせる。国の経済を顧みない拡大主義は危険だ。
 覇権を競う米中の先行きは見えづらい。交渉を継続し追加関税の激化はひとまず回避されたが、首脳会談で最終合意にこぎ着けられるかは予断を許さない。米朝首脳会談が物別れになったことを受け、中国が二の舞いを避けようと慎重になっている。
 焦点は、米国が是正を求める国有企業への産業補助金などの構造改革だ。とりわけハイテク分野での知的財産権侵害を巡る対立が、米中摩擦の核心として顕在化している。
 米司法当局は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の排除を狙い、副会長を起訴。ファーウェイ側も米政府による同社製品の使用禁止は違憲とし提訴し、反撃に出た。次世代通信規格「5G」の世界シェアを巡る主導権争いとして熱を帯びそうだ。
 情報技術、軍事転用に及ぶ権益の譲歩は容易でない。互いの懸念を取り払うことができなければ、問題は長期化しよう。それならまず歳出削減などで足元の財政・経済悪化をとどめることに全力を傾注すべきだ。世界を巻き込む混乱を招いては元も子もない。