ニュージーランド(NZ)・南島のクライストチャーチで起きた残忍な銃乱射事件が世界に衝撃を広げている。
 移民受け入れには寛容で、多様性を重んじてきた穏やかな国柄である。およそ、大規模なテロ事件の舞台とはかけ離れているこの国が、なぜ狙われたのか。
 オーストラリア人の容疑者の男が、インターネット上に残した長大の犯行声明では、襲撃は白人と移民の分断をあおる目的だったという。NZの移民受け入れは年数万人。先住民マオリとも共存し、融和的な社会を築いてきた。
 イスラム教徒らの移民を「侵略者」と決め込み、「奪われていく白人の土地と、子どもたちの将来を守るため」という身勝手な理由で、モスク(イスラム教礼拝所)に来ていた罪のない人々の命を奪った。犠牲者の中には5歳の女児もいたという。断じて許すことはできない。
 同じオセアニアの隣国をターゲットにしたことについては、NZに移民が多くいることが分かり、「世界のどこも安全ではない」と知らしめる狙いがあったらしい。あまりにも理不尽な排外主義に身震いがする。
 犯行声明と同様のメッセージが事件直前、首相府など30カ所以上の宛先にメールで送られていた。声明では、パキスタン系移民2世で、ロンドン市長の殺害が呼び掛けられていたことも分かった。
 移民排斥やヘイトクライムの動きは、欧米を中心に世界に拡大している。テロはどこででも起こり得るという意識を改めて確認しておきたい。
 容疑者は、過去にノルウェーで連続テロを起こした白人至上主義者の思想に影響を受けたという。同時にトランプ米大統領を「白人の新しいアイデンティティーの象徴」として目標としていた。
 白人社会に親和的なトランプ氏は、不法移民対策として議会の決議に拒否権を行使してまで、メキシコ国境の壁建設に執念を燃やす。不法移民が、犯罪など諸悪の根源であるかのような言説は、短絡的な排外主義と根本部分でつながっているのではないか。
 間違っても、米大統領がテロ容疑者の「目標」としてあがめられるような不合理があってはなるまい。
 NZのアーダン首相は「文化や宗教の異なる人々が安心して暮らせる社会こそが、ニュージーランドだ」と述べている。これまで銃規制が緩かったNZには、人口の約3割に当たる150万丁が出回っていると推計されている。容疑者も容易に入手できた。
 首相は早速、規制強化に向け法改正案を近く発表する。銃による殺傷事件が起こるたびに規制論が浮上する米国では、自己防護論や業界の圧力でかき消されてしまう。NZは高いレベルの規制で世界に先鞭(せんべん)をつけてほしい。暴力による悲しみの連鎖はいいかげん、断ち切らねばならない。