日産自動車がカルロス・ゴーン前会長の不正事件を受けて設置した「ガバナンス(統治)改善特別委員会」が最終報告書をまとめ、会長職の廃止などとともに、指名委員会等設置会社への6月末までの移行を強く求めた。

 報告書は「典型的な経営者不正」として、前会長の行為を厳しく指摘し、神格化された前会長のワンマンぶりを糾弾した。日産は形骸化していた企業統治を立て直し、失った消費者の信頼を回復しなければならない。

 ゴーン前会長に意見を述べるような監査役は再任しなかったという事実も、報告書は明らかにした。会計監査と業務監査を通じてガバナンスの適正確保を担う監査役が、こうした処遇に遭ってはチェック機能の働きようがない。

 他方、前会長の容疑となっている巨額の報酬隠しや私的な資金流用などを恐らく認識しながら、その暴走を阻止できなかったほかの経営幹部にも、重い道義的な責任があるはずである。

 特別委が移行を求めた指名委員会等設置会社は、日本では2002年の商法改正で創設されている。大企業の不祥事が続き、経営に透明性を持たせるため、米国と類似の制度を取り入れたものだ。

 多くの会社では経営トップの代表取締役が人事や報酬の権限を握りがちだ。このため取締役会などよるトップへの監視が十分には機能していないとされる。指名委員会等設置会社は、こうした社内の上下関係にとらわれずに監視機能が働くのを狙いとした。

 指名、報酬、監査の3委員会が社内に設置され、いずれも過半数が社外取締役でなければならない。各委員会の権限は強く、取締役の選任や解任議案を決定したり、取締役の個人別の報酬額を決定したりする。

 国家統治における権力分立と類似した構造を取り入れたものであり、企業経営に社外の視点を反映させるのには適した統治システムだ。しかし、社外取締役が強い影響力を持つことへの抵抗感が強く、ほとんど普及していない。

 直近の統計によると、上場会社のうち70社余りしか導入していないという。比率にすれば、わずかに2%を上回る数字にすぎない。グローバル化が進み、経営の透明性が強く求められる中で、導入を検討すべき企業は多い。

 「国際的に分かりやすいベスト・プラクティスを構築する必要がある」との報告書を日産は重く受け止め、できるだけ早く、経営の刷新と委員会等設置会社への移行を進めなければならない。

 最も重要なのは会社の経営を任された経営トップの認識であるのは言うまでもない。企業は経営者の所有物ではなく、出資した株主だけでのものでもない。従業員、取引先、債権者、そして日産の場合は数多くのユーザーの存在を忘れてはならないはずだ。