国内景気の減速感が少しずつ鮮明になり、地方にも波及してきたのではないか。日銀が発表した4月の地域経済報告(さくらリポート)は、全国9地域のうち、東北、北陸、九州・沖縄の3地域の景気判断を引き下げた。

 3地域の判断を同時に引き下げたのは、2013年1月以来、6年3カ月ぶり。東北の景気の基調判断の引き下げは3年ぶりだ。しかし、黒田東彦総裁は「国内経済は緩やかに拡大している」としている。実態に即した妥当な評価と言えるか疑問が残る。

 3月の日銀企業短期経済観測調査(短観)では、企業の景況感が大幅に悪化した。国内経済の失速を懸念する声は大きくなっている。こうした状況で、予定通り10月に消費税を増税すれば、景気に深刻な打撃を与えるのは必至だ。

 短観では中小企業の業況判断指数(DI)が前回昨年12月の調査より2年9カ月ぶりに悪化。製造業の景況感も前回より悪化し、先行きについても製造業・非製造業ともに悪化するなど、とても「緩やかに拡大」とは言えまい。

 中国経済の減速や英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱、米国経済の変調など、主として世界経済の先行き不安から、企業心理の冷え込みが鮮明となっている。頼みの綱の内需は消費税増税で秋以降は大幅に落ち込むだろう。

 安倍晋三首相は「リーマン・ショック級の出来事が起きない限り、予定通り引き上げる」と繰り返し述べている。しかし、問題なのは増税後の国内景気だ。それこそ、リーマン・ショック級の事態を招く恐れがある。

 黒田総裁の下で副総裁を務めた経済学者岩田規久男氏は先週、デフレ脱却を完全なものにするために「10月の消費税増税は凍結すべきだ」とあるシンポジウムで訴えた。

 日銀の大規模金融緩和によって2%の物価上昇目標が達成しかかった14年4月、消費税率8%への引き上げの影響で個人消費が大幅に減少し、目標が遠ざかった。岩田氏はこのように分析している。

 一方、増税に向けて軽減税率の適用やキャッシュレス決済時のポイント還元など着々と準備は整う。しかし、これは政府自身、増税による景気悪化は不可避とみているための一時しのぎの対策にすぎない。対策が終了した後の反動減をむしろ恐れるべきだ。

 大阪市で6月、20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれる。世界経済の不安定要因が増大している中、さらには国内経済の後退が表面化しつつある中で、日本が予定通りの増税を議長国として表明していいものかどうか。

 消費税の増税は過去の失敗例を引くまでもなく、景気を悪化させ、税収を減らし、結果的に政府の赤字を増やしてしまう。代替の財源は所得税の累進税率や法人税の引き上げなどで対応するという常識に立ち返っていい。