東北の地域経済で、令和が大廃業時代となるリスクが高まっている。経営者の高齢化と後継者難、人手不足は深刻さを増す。人材、技術、設備を次代につなぐ事業承継が、新時代の喫緊の課題として突き付けられている。
 中小企業庁によると全国の中小・小規模事業者は6年後、経営者の7割近くが平均引退年齢の70歳を超える。いわゆる「2025年問題」だ。
 東北の企業は約26万7000社(2016年)。中小・小規模が99.8%を占める。東日本大震災の被災地で加速する少子高齢化を踏まえると、経営者の高齢化が全国に先駆けて進むのは必至だ。
 東京商工リサーチ東北支社がまとめた18年の東北の休廃業・解散動向調査で、負債がないまま事業を停止するなどした企業は前年比27.8%増の3096件に達し、過去最高となった。震災後に急増し、全国(14.2%)の倍近い速さで企業が消えている。
 同年の休廃業と倒産(358件)を合わせると東北の企業全体の1.3%となり、2万人超の雇用が失われた計算になる。被災地では補助金で延命した企業が息切れし、継続を諦める事例が出ている。
 事業承継は地方の持続可能性と直接関わり、最優先の政策課題になっている。
 19年度版の中小企業白書は人口減と少子高齢化を中小・小規模事業者の最大の課題と位置付ける。事業承継の推進を前面に出し、世代交代の円滑化、合併・買収(M&A)による第三者への事業譲渡など早急な取り組みを求める。
 廃業阻止に向け、政府の規制改革推進会議は地方銀行が事業承継を支援する場合に限り、銀行法が限度とする5%超の出資を認める方針を示した。政府は本年度、10年限定の「個人版事業承継税制」を創設。個人事業主が事業用の宅地、建物などを引き継ぐ際、相続税や贈与税を全額猶予し代替わりを促す。
 地方の金融機関にとって、地域経済の先細りは死活問題だ。東北の地銀や信用金庫などは事業承継の専門部署を相次いで設置。M&Aを含む後継者難対策に積極的に乗り出す。支援企業の規模の偏りなど課題が指摘されており、地元企業のリスクの一端を引き受ける覚悟が問われそうだ。
 中小・小規模事業者の意識改革も迫られる。現在の後継者問題は課題を先送りし続けた帰結とも言える。高齢の経営者ほど設備投資や業務効率を高めるICT(情報通信技術)導入に消極的になることが多い。事業承継を成長の好機と捉える発想が肝要だ。
 企業の消失は地域の資源と資産の損失でもある。震災復興の先に、荒涼とした大廃業時代があってはならない。事業承継は経済分野にとどまらない地域全体の課題だ。新時代、企業、金融、行政、政治が連携し合い、地域の総合力で苦境を打破する仕組み作りが不可欠だ。