実行犯の狙いはどこにあるのか、背後には何が潜んでいるのか。スリランカで連続爆破テロ事件が起き、約290人が死亡し、多くの負傷者を出した。現地に在住していた日本人1人が犠牲になったほか、数人がけがを負った。
 仏教徒の多い同国と日本とは親密度が高い。観光客が増えているのをはじめ、津波を受けやすいという共通した地政学的条件から、災害対策で支援と協力の関係にある。それだけにテロの衝撃は大きく、同国当局には徹底した捜査と動機の解明を望む。
 連続爆破があったのは、コロンボ中心部にある教会と高級ホテルなどだった。キリスト教徒にとって重要な行事である復活祭のミサを標的にしている。キリスト復活を祝う日に照準を合わせるとは、欧米など国際社会を敵に回す行為とも言える。
 シャングリラホテルでは2階のレストランが狙われた。各国からの観光客を視野に入れていたのだろう。複数の場所が同じ時間帯に襲撃されていて、綿密に計画を練っていたとみられる。卑劣で残虐な行為は決して許されない。
 多宗教徒のひしめく同国では30年以上前から仏教徒中心のシンハラ人と、ヒンズー教徒のタミル人による内戦が続いた。2009年の内戦終結後は政情が落ち着き、大規模なテロは起きていない。
 キリスト教徒は人口の1割弱にすぎず、従来の対立構図とは異なる事情によって起きた可能性がある。8カ所で起きた爆発の大半が自爆だったことから、イスラム過激派の関与が取り沙汰される。
 同国の主要産業は紅茶、ココナツ、ゴムなど。衣類品のほか、観光ホテル業なども成長の途上にある。比較的豊かなキリスト教徒が狙われたのは、恩恵を受けない層と格差が生じ、恨みを買ったとの見方も捨てきれない。
 巨大な白い仏塔など仏教文化の遺跡には日本から多くの人が訪れる。「東洋と西洋が交差する楽園」とのうたい文句にも引かれ、観光客は年間約5万人にも達する。日本は主要貿易国の一つであり、交流は多分野に広がっていた。
 04年12月に起きたスマトラ沖地震では、最大10メートルの津波が押し寄せ、3万人が命を落とした。東北大の津波研究者がすぐさま現地入りし、発生メカニズムを解析するとともに防災対策について共同研究を行っている。
 穏やかな交流が、テロによって水を差される事態になったのは残念なことだ。当局は実行犯とみられるイスラム教徒を拘束した。真相解明を進め、一日も早く落ち着きを取り戻すことを願う。
 先月中旬、ニュージーランドで銃乱射事件が起き、暴力の連鎖は地球規模で拡大しているかのようだ。意見の異なる人や宗教の違いを認めない不寛容な傾向に危惧を覚える。テロには決然とした態度で臨みたい。