緻密な議論を欠いたまま「戦場」が拡大し、防衛当局による共同対処の既成事実が積み重なるような事態は避けるべきだろう。日米両政府の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は共同文書を先頃発表し、宇宙やサイバー空間といった「新たな戦場」での連携強化を盛り込んだ。
 サイバー攻撃がわが国の原子力など発電施設や金融システムといった重要な社会インフラに向け実行されれば、深刻な被害をもたらすことも予想される。この分野で防衛能力を高めることが不可避だとするなら、国民が見えるよう丁寧な議論をし、法的位置付けが明確化された上で行われなければならない。
 「新たな領域を含め同盟を強化していくことで一致した」。河野太郎外相は4月下旬、2プラス2後の記者会見で成果に胸を張った。
 インターネットがつくり出すサイバー空間、通信に必要な人工衛星がある宇宙空間、電磁波といった分野は、従来の陸・海・空の枠を超え、新たに防衛が必要とされる「防衛の新領域」と呼ばれる。
 各国の防衛システムは、情報通信技術の進展を取り込んでコンピューター網への依存度を高めており、攻撃への対応策を整えることは急務とされている。
 ただ実際には難しい問題が山積する。どんな攻撃をサイバー攻撃とみなすか。そんな入り口の議論さえ、法的整理はこれからというのが実情のようだ。岩屋毅防衛相はサイバー攻撃を受けた際の武力攻撃認定について、米国の定義を例示し「考え方を参考にしたい」と述べるにとどめる。
 そもそもサイバー空間では、攻撃を仕掛けているのが個人なのか組織なのか国なのか、見極めるのも難しい。宇宙や電磁波の分野では自衛隊の組織体制もこれから整備する段階だ。
 2プラス2の共同文書は、日本へのサイバー攻撃が、米国の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると初めて確認した。
 政府は「抑止力になる」として歓迎する。心配なのは安全保障関連法に基づく集団的自衛権との兼ね合いだ。米国が攻撃を受け助けを求めてきたとき、日本が協力するのか、できるのか判然としない。国内議論も進んでいるとはいえまい。
 憲法9条の下での専守防衛の原則と既存の国内法制度との整合性は、しっかり確保しなければならない。想定される多様なケースごとに、できることと、できないことの厳密な仕分け作業が必要だ。
 共同文書がうたう連携強化で、自衛隊と米軍の一体運用がなし崩し的に進むのではという懸念もある。軍事面の連携だけに前のめりになる姿勢は危うい。「新領域」に関する国際的な合意形成や監視体制など枠組み作りに、日本が果たせる役割もあるはずだ。