児童虐待が後を絶たない。貧富の差が拡大し、子どもの貧困はなかなか解消しない。令和の新しい時代となった日本で、厳しい環境にさらされている子どもたちが少なからずいる。

 子どもの人権を国際的に保障する「子どもの権利条約」が1989年、国連総会で採択されてから、今年は30年の節目となる。日本は94年に批准し、ちょうど四半世紀となるが、その理念が社会に根付いたとは言い難い。

 条約は子ども(18歳未満)を単に保護や指導の対象ではなく、権利を持つ独立した主体と捉え、「最善の利益」を尊重している。そんな国際社会の約束は、画期的だったと言っていい。

 これまで196の国と地域が批准、加入した条約は前文と54の条文から成る。命を守られて生きる、医療や教育を受けて育つ、暴力や差別などから守られる、自由に意見を表明し活動に参加する-。そうした子どもの権利を具体的に定めている。

 しかし、日本の子どもを取り巻く現在の状況をこの条約に照らして眺めると、険しい光景が広がっている。

 全国の児童相談所(児相)が対応した児童虐待の相談件数は年々増加し、2017年度は13万件を超えた。虐待は子どもの人権の重大な侵害だが、その受け皿となる児相の体制は不十分だ。

 18歳未満の7人に1人が平均的な所得の半分に満たない家庭で暮らす。とりわけ、1人親の世帯は半数以上が貧困状態にあえいでいる。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、日本の教育機関への公的支出は最低水準にある。子どもに最善の利益を保障する取り組みは、貧弱だと言わざるを得ない。

 国連子どもの権利委員会は今年2月、10年以来となる日本への勧告を公表し、体罰の全面的禁止の法制化などを求めた。子どもの貧困率にも言及し、十分な対策を取れる予算措置を勧告している。

 勧告は特に、子どもの権利に関する包括的な法律がないことに懸念を示し、条約と国内法を調和させるよう強く求めている。男女平等を推進するための男女共同参画社会基本法のように、子どもの権利を包括的に定める基本法の制定が必要ではないか。

 政府は、東京都目黒区や千葉県野田市の女児が虐待死した事件を受け、親による子どもへの体罰を禁止する法改正案を今国会に提出している。しかし、これまでの対応は後手後手だった。政府は勧告を真摯(しんし)に受け止め、その内容を実施してほしい。

 きょうは「こどもの日」。新たな時代の担い手となる子どものため、権利条約にも思いを巡らせたい。この条約を知り、理解し、実現していく責任が大人にはある。

 子どもの権利を守ることは、すべての人の人権を守る出発点であるはずだ。